TokyoRentコラム

Vol.6住みやすさへの配慮は細部に宿る

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02/20/2006 ※update on 08/28/2019

前回のコラムで取りあげたように、建物の強度を見る指標のひとつに設計・施工があります。しかし、施工状態はプロでも見極められないもの。であれば、設計から読み取るしかありません。そこで今回のキーワードは「細部に神宿る」。細かい部分に配慮、住みやすさを考えた設計がなされていれば、いい加減な施工ではないだろうと類推できますし、ひいては耐震強度もきちんとあるものと思われます。では、どんな部分から配慮を読み取ればいいのでしょう。

柱・梁が邪魔にならないような設計になっているか?

従来型の工法で、室内に柱が出っ張り、家具が置けない、使えないスペースが生まれていた。 柱を住戸の外に出すことで、室内をすっきり見せる工法。ただし、バルコニー側だけがアウトフレームという物件も。最近では柱をバルコニー部分まで伸ばし、バルコニー側の窓部分に梁が来ないようにするアウトフレーム逆梁工法もよく見かけるようになった。

多くのマンションは柱と梁で建物を支えるラーメン構造。そのため、柱・梁をまったくなくしてしまうわけにはいきません。とはいえ、室内に柱・梁が出っ張っていると、デッドスペースが生まれ、部屋が有効に使えない上、見た目にも狭く感じます。そこで最近では柱・梁を室外に出し、室内を広く使えるようにするアウトフレーム工法が中心になっています。新築はもちろん、築年数が浅い物件であれば、この工法を取り入れていないマンションはあまり良心的とはいえません。

ただし、アウトフレーム工法を取り入れても柱・梁がすべてなくなるわけではありません。そこで見ていただきたいのは、どこにその梁が出ているか。部屋の真ん中に出ているようなら、その物件は避けるべき。設計に手を抜いていると思われるからです。

トイレの位置、サイズは配慮の有無を示す

室内を見学に行っても見落としがちで、かつ重要なのがトイレです。まず、住戸内の場所で言えば、玄関脇は避けたいところ。ドアを開けた途端に玄関にいる人と目が合うようでは落ち着きません。また、リビング入り口近くの廊下にある場合、リビングとトイレのドア同士がぶつかるようでは配慮がありません。ドアに関していえば、開けた時に他のドアを邪魔するような設計は基本的に問題があります。

次に注意したいのは便器の先端から壁あるいはドアまでの距離。身体を前に倒しても頭がぶつからないためには55cmは必要といわれますが、実際には45cm、50cmなどという物件が少なくありません。特に身長の高い人は窮屈な思いをすることになりますから、できるだけ余裕を持った作りのトイレのある物件を選びましょう。また、ペーパーホルダーはトイレの左手が、右利きには使いやすい配置です。

もうひとつ、トイレのドアは中で人が倒れたときに助け出しやすくするため、外開きになっています。ところが、外開きの場合、勢い良くドアを開けるとドアハンドルが壁にぶつかる可能性があります。そこで、配慮のある物件ではそれを防ぐためにドアに工夫をします。一般的にはドアの上部あるいは下部に戸当たり金具を取り付けますが、ベストはスライドストッパー。これは伸縮する棒を内蔵したもので、必要以上にドアが開かないようにする器具で、見た目もスマート。特に窓から強風が入ることもあるタワーマンションでは必需品です。

照明の数、風呂の蓋など、浴室には見るべきポイントが多数

浴室の照明は1箇所だけという物件が多いようですが、明るさの面でいえば、ベストは2つです。浴槽の蓋は蛇腹タイプより、2枚の板になっているタイプがひび割れたり、破れにくくて◎。また、新築あるいは築年数の浅い物件なら、シャワーフックではなく、シャワーフックバーがおすすめ。上下に移動するフックが付けられたバーで、好きな高さでシャワーが固定できます。もちろん、シャワーフックは上下2箇所が基本です。

包丁差しの位置で使いやすさが左右される

流し台の扉の裏に付いている包丁差し。付いていることを確認する人は多くても、それが観音開きの扉の右か、左かまでは気にしないのでは? しかし、右利きであれば、右手で包丁を抜くのが基本。左扉裏なら左手で開けて右手で抜くことになり、無理のない動作ですが、これが右扉裏だと、右手で開けて左手で抜く、あるいは右手で窮屈な思いをして抜くことになり、不自然。無神経な設計です。

和室では押入れの中に配慮が隠されている

もし、和室があったら、押入れの中を覗いてみてください。中段と奥の壁の間に隙間が設けられていれば良し、もし無ければ×です。これは業界では「スリット」と呼ばれるもので、押入れ内の空気を循環させるために必要な隙間。これがないと、特に新築では押入れの中の布団がかびてしまうことにもなりかねないのです。

実際にはもっとたくさんのチェックポイントがありますが、最低でも上記の点を見ておけば、間違いはないはず。次回、室内を下見するときには、こうした細かい点をそれこそ重箱の隅をつつくようにチェックしてみてください。

  • 掲載のイラストは概念図ですのであらかじめご了承ください。

【文・構成】

中川寛子(なかがわひろこ)
借りる、買う、貸す、建てるなど、住まいに関する雑誌、書籍、インターネットなどの編集に携わること20数年。
長らく表参道に暮らし、都心居住の快適さを身をもって実感している。All About「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。

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