都心に新しい住宅エリアが誕生します。2023年11月24日に開業する「麻布台ヒルズ」です。ここは森ビルが30年超の歳月をかけて開発に取り組んできたエリアで、そこに約1,400戸のタイプの異なる多様な住宅が生まれます。環境も含めて、どのような住宅があるのかをご紹介していきましょう。
都心居住を変える、住む街としての麻布台ヒルズ
麻布台ヒルズが立地するのは東京メトロ日比谷線神谷町駅と同線及び都営大江戸線六本木駅の間。アークヒルズに隣接、六本木ヒルズと虎ノ門ヒルズの間にあるといえば分かりやすいでしょう。
開発されたエリアは東西に細長い、18m近い高低差のある谷状の地形が障壁となり、都心にありながら長らく建物の更新が行われず、低未利用だった場所。細分化された敷地に老朽化した木造住宅などが密集する区画もあり、防災・防犯的に問題を抱えていました。
アークヒルズや六本木ヒルズも同様に地形的に課題があるエリアでしたが、開発が行われ、都心の魅力的な街として再生されたのはご存じの通り。麻布台ヒルズも約6,000㎡の中央広場を中心に2.4ヘクタールほどの緑地が広がる、8.1ヘクタールもの新しい街として生まれ変わりました。
いずれのヒルズも「都市の中の都市(コンパクトシティ)」として、環境や安全性、快適さなどにこだわって作られていますが、麻布台ヒルズは「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」があって子どもの声がするなど、これまでよりも住む街としての色が強いと森ビル株式会社 住宅事業部 事業推進部の重田真実氏。
「これまでのヒルズで培ったすべてを注ぎ込んだのが麻布台ヒルズ。アートを随所に配したり、健康相談室も設置するなどコアとなる部分は変わっていませんが、時代によって社会は変化しますし、ニーズも変ります。それを踏まえてより都市の豊かさを実感、街全体を使いこなしながら暮らせる、「ヒルズの未来形」ともいえる街となっています」。
区域面積約8.1ヘクタールは2003年の六本木ヒルズの約11.6ヘクタールに匹敵するスケールですが、住戸数は六本木ヒルズに比べ約600戸多いと考えると、規模、質の両面ともに都心居住を変えるインパクトの大きな開発といえるでしょう。
都心にできた緑とアートに包まれた空間
住宅そのものが魅力であることはもちろんですが、ヒルズの場合にはそれを囲む環境に他にない特徴があるのはご存じの通り。そこでここではどのような環境が用意されているのかをまず見ていきましょう。
なんといっても大きな存在は緑。麻布台ヒルズの開発コンセプトは「Modern Urban Village」とされていますが、それを支えるふたつの柱は「Green」と「Wellness」。2023年8月に行われた開業を告知する記者説明会で最後に流されたムービーのタイトルが「GREEN, LIFE, TOKYO.」であったことも併せて考えると、込められた思いの強さが分かります。
具体的には敷地の中央にあって人をつなぐ街のシンボルとなる6,000㎡の中央広場に始まり、斜面を利用して作られる約200㎡の果樹園、常緑樹・落葉樹を混交した雑木林を思わせるような桜麻通り(さくらあさどおり)の並木、街の出入り口となるエリアごとに植えられた開花時期の異なる桜のゲートウェイ、屋上緑化の施された建物群などなど。約320種の植物が植えられるそうで、中には高さ13mにも及ぶ欅なども。高低差を生かして敷地内に配される水流沿いには水生植物も見られるようになるとのことで、都心に森がひとつできると考えるとイメージしやすいかもしれません。
これだけの緑の環境を作れたのは敷地全体の広さがあってこそ。再開発は細分化した権利を集約、ひとつの土地にまとめることで街を更新するもの。ある程度集めたところで良しとする考え方もありますが、麻布台ヒルズの開発で平成の30年間を約300人もの権利者との協議に費やしたのはこれだけの土地を集約するため。それが緑の大空間を可能にしました。
広大な敷地の中に点在するパブリックアートを始めとする芸術の空間も豊かな環境を生み出す要素のひとつ。
森JPタワーにはデンマークのオラファー・エリアソン、中央広場には日本の奈良美智、曽根裕などの作品が置かれ、ガーデンプラザAには「麻布台ヒルズギャラリー」が。開館から1年で世界160ヵ国以上の国と地域から約230万人を集めた「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」の移転も話題です。
世界基準で選ばれるための教育環境
もうひとつ、これだけの広さがあって可能になったもののひとつに森JPタワーの地下1階~7階に設置される「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」があります。
日本が世界から選ばれる都市になるためには外国人ビジネスワーカーやその家族の生活をささえる生活環境の整備が欠かせませんが、そのひとつが教育環境。
校庭や体育館などを用意することを考えると都心では立地しにくいところがありましたが、麻布台ヒルズでは2つの校庭、体育館、屋内プールなどの体育施設、2つの図書館、アートスタジオ、デジタルテクノロジースタジオなどが用意され、60ヵ国以上の国籍の約740人(想定)の幼児・初等教育科の子ども達が学ぶことになります。
大人だけでなく、子ども、しかも世界中の国の子ども達のいる環境は多様性の具現化。大人にとっても、ここに暮らす子どもにとっても刺激的で創造性に富んだものになるのではないでしょうか。
健康、ウェルネスにも配慮
ヒルズでは日常的な健康への懸念に対して24時間看護師が常駐する健康相談室を設置、対応していますが、麻布台ヒルズではそれをさらに進めた「慶應義塾大学予防医療センター」が森JPタワー5階~6階に入ります。
人間ドックで疾患のリスクを早期に発見するだけでなく、個別化する受診者のニーズに応じた健診プログラムも展開されることになるとか。最先端の予防医療が身近にあるのは働き盛り、高齢者はもちろん、どの年代の人たちにとっても安心なことでしょう。
また、それ以外にも内科、消化器内科や歯科のクリニックも入居する予定となっています。
ウェルネスという意味ではレジデンスAの1階~13階に誕生する、アマンが手掛ける世界初登場の姉妹ブランドホテル「ジャヌ東京」の都内ホテル最大級という約4,000㎡のウェルネス施設にも注目したいところ。トレーニングスタジオ、フィットネスジム、プール、スパなどが備えられており、健康に関心のある人なら見逃せないスペース。
レジデンスA居住者は階下にジャヌ東京があるため、オプションでホテルのサービスが受けられるとのことですから、期待したいところです。
日本の食を満喫できるフードマーケットと多彩な店舗
充実した商業施設も大きなポイントです。敷地内には全体で約150店舗が入る予定で、特に目をひくのは毎日の暮らしに欠かせない大規模なフードマーケット「麻布台ヒルズ マーケット」。中央広場の地下に位置し、広さは約4,000㎡。
地域密着の知る人ぞ知る鮮魚店「根津 松本」や予約の取りにくい焼き鳥店「鳥しき」が出す惣菜、日本人初世界一になったシェフのいるベーカリー「Comme‘N TOKYO」のパンなど聞いているだけで食べたくなるようなラインナップは麻布台ヒルズならでは。
しかも、店同士のコラボレーションや各種ワークショップ、イベントなども予定しているそうで、グルメにとってはどきどきするような場になりそう。食を大事に考える人には学びも多い場所になりそうです。
もちろん、生鮮食料品だけではなく、飲食店、カフェ、スィーツ、物販その他の店舗も世界から選り抜きの店が集まります。
4棟それぞれに魅力ある全1,400戸の住宅
続いては気になる住宅について。
麻布台ヒルズでは7棟の建物のうち、4棟に住宅が配されています。戸数がもっとも多いのは六本木一丁目駅に近い「麻布台ヒルズレジデンス B」で全970戸。6階~64階にあるレジデンスには30~400㎡、1ルームから4ベッドルームが用意されており、家具付きのサービスアパートメントも160戸あります。
共用施設としてはラウンジ、ゲストルーム、スタディルーム、シアタールーム、ジム、キッズルームなどさまざまな施設が用意されています。
その隣に立地する「麻布台ヒルズレジデンス A」は前述したホテル、ジャヌ東京の上階、14階~53階にあり、戸数は320戸。
「中央広場に面しており、緑を存分に楽しめる棟です。2層吹き抜けの天井高が約6mほどある住戸や、プール付きの住戸など、ゆとりと開放感のある住空間を用意しており、共用部としてはラウンジ、ゲストルーム、ダイニングなどがあります」。
戸数は91戸と少ないものの、世界的にも注目の的となっているのが森JPタワーの54階から64階にある「アマンレジデンス 東京」。
「アマンレジデンスは、世界遺産の中にあるレジデンスなどここにしかない唯一無二の立地が、ひとつ大きな特徴です。アマンレジデンス 東京では、東京タワービューを独り占めできる息をのむ眺望が楽しめる立地となっており、東京の住宅の中でも突き抜けた存在となっています」。
もちろん、立地以外にも住戸の設備、広さ、共用施設などすべての面において他にないものが用意されています。たとえば共用部としては約1,400㎡というアマン・スパがあり、それ以外ではラウンジ、バー、プライベートダイニングルーム、ティールーム、ライブラリー、リーディングルームなど。エクスクルーシブな住宅ということでセキュリティ、プライバシーへは特別な配慮がなされています。
アマンレジデンスとは逆にミニマムな暮らしを求める人達に向けて作られたのが「麻布台ヒルズ ガーデンプラザレジデンス」。ガーデンプラザ6階~8階にある、麻布台ヒルズ唯一の低層住宅で、緑に近い環境が特徴です。
1ベッドルームから4ベッドルームの31戸が用意されており、一歩外に出ればなんでも揃う環境をフルに活用、住戸はシンプルにというのがコンセプト。イギリスのヘザウィック・スタジオの建築を楽しむ暮らしができます。
【PHOTO GALLERY】麻布台ヒルズ ガーデンプラザレジデンス
住戸+環境がこれからの住まいの要件
「住戸内部、サービスにもこれまでの蓄積を注ぎ込み、住む人にとっての最適を目指しています。たとえばサービスではその人が望む距離感を見極め、近すぎず、遠すぎず、その人が快適と感じるように対応するようにしています。
食べて寝るだけが家ではありませんから、人をお招きする状況なども想像、共用部やラウンジを設えるようにしていますし、住戸内ではPP分離が基本。お手伝いさんの動線も配慮しています。また、入居後にはどうコミュニティを作っていくかも検討をしています」。
敷地全体といった大きなところから各住戸の動線、入居者と接するスタッフの距離感に至るまで細やかな心遣いが感じられる麻布台ヒルズのレジデンスですが、大事なことは「住宅は借りて住むだけの箱ではありません」という意識。生活は箱の中だけで完結するわけではなく、箱を囲む環境も含めてが暮らしです。特にコロナ禍では環境の豊かさが生活の質に直結することを認識した方が多かったのでは。
そう考えると、これからの時代には住戸単体だけではなく、街としての魅力も含めて、住まいを考えていく人が増えることは十分に想定されます。その目で麻布台ヒルズを見るとどう見えるか。ぜひ、考えてみていただきたいところです。
取材物件・取材協力
【取材物件】麻布台ヒルズ ガーデンプラザレジデンス
【取材協力】森ビル株式会社