在宅で働く人が増えたことを受け、ワークスペースを設置した賃貸住宅が目につくようになりました。明治神宮に隣接する「ザ・パークハビオSOHO代々木公園」も1階にコワーキングスペースを設けた「暮らす」と「働く」がひとつになった住まいですが、他の類似した物件とは異なり、企画がスタートしたのはコロナ禍以前の2019年1月。将来の働く、暮らす意味を熟考し、時代を先取りしたプロジェクトというわけで、その結果としての物件には他と異なる特徴、魅力が散りばめられています。完成直後の現地を見学してきました。
時間、空間、費用を賢く使う「スタイルラウンジ」
ザ・パークハビオSOHO代々木公園が立地するのは小田急線参宮橋駅東口から歩いて4分、道を挟んで明治神宮と向かい合う場所です。三菱地所レジデンスの新シリーズ「ザ・パークハビオSOHO」としては大手町に次ぐ2棟目で、続いては2023年5月に東急東横線祐天寺駅東口徒歩1分の場所に3棟目が予定されています。
この新シリーズの特徴は「暮らす」と「働く」をひとつの建物内にまとめ、時間、空間、費用を賢く活用できるようにしたこと。そのために設けられているのが1階のスタイルラウンジです。
上階が自分の住まいですから、通勤時間は不要。部屋から出て降りてくるだけでオフィス仕様の設備が整った空間が用意されており、ストレスなく仕事が進められます。法人登記が可能なので、スタートアップ企業、副業・複業を考えている人もオフィスと住宅で二重の賃料を払う必要がなくなります。
しかも、スタイルラウンジと名付けられているだけあり、絵になる、気持ちよく背筋の伸びる空間となっており、外からはまるでカフェのように見えるほど。間違えて入ってくる人がいても不思議ではありません。
時代に先駆けた提案が形に
こうした豊かなワークスペースが生まれる契機になったのは三菱地所グループ内での新規事業提案制度。働き方改革という言葉に通勤時間不要の住まい、オフィスと住宅の中間領域のビジネスを考えたという提案者の福井一哉氏(三菱地所レジデンス 賃貸住宅計画部 計画第四グループ主任)は以前は分譲マンションの担当でした。
「分譲マンションではエントランスを入ったところに高額なソファを配したラウンジ、ライブラリーなどの空間を作るのが一般的ですが、物件によってはあまり使われないことがあります。何をするスペースか明確でないことが理由だろうと思いますが、せっかく作ったスペースを使っていただけないのはもったいないこと。もっとお住まいの方に喜んでいただける空間を作れないだろうかと常々思っていました」。
その一方で当時話題になったのが過労死問題。福井氏は働き方を変えるためには通勤時間を無くすことができればよいのではと考えました。自宅あるいはその近くで働くという手です。そのための場としてコワーキングスペースが急増している時期でしたが、それもあまり使われていない様子。調べてみると、社外や我が家から離れたコワーキングスペースでは行くために時間がかかり、通勤と変わらない上、仕事場として空間がそれほど快適でないことが要因と思われました。
であれば、どのような場があれば通勤時間を無くして快適に働き、暮らせるか。福井氏はIT系企業、テレワークを可としている企業などに勤務する28名にそれぞれ1時間のロングインタビュー、500名弱を対象にしたWebアンケートを実施。家、カフェ、コワーキングスペースそれぞれで働く場合の問題点、フリーランスの問題点などを抽出。それらのすべてをクリアする住まいを検討した結果が新シリーズ、ザ・パークハビオSOHOです。
2019年1月の提案時点ではテレワーク、在宅勤務などといった言葉自体がまだまだ一般的ではなかったことを考えるとその先見性には驚かされます。実際の物件の完成が3年半後になったのは土地の購入から始まり、細部に至るまで徹底的に企画を詰めてきたため。実際の物件を見学するとその計画の緻密さに圧倒されます。
スタイリッシュな仕事場には様々な気配りが
では、実際の物件を見て行きましょう。参宮橋駅から歩いていくとガラス張りの1階がひときわ目立つのがザ・パークハビオSOHO代々木公園。小田急線の線路に沿った細長い建物となっており、思わず覗き込みたくなるほどの存在感です。これは意図したもので、「外に見せたい、見せるようにしている」と福井氏。憧れられる空間を目指しているということでしょう。
建物中央にあるエントランスはギャラリーを思わせる空間で正面には針葉樹を使ったウォールアート。明治神宮に近いということで緑、木が随所に使われており、土地に対するリスペクトを感じます。
24時間利用できるスタイルラウンジにはオープン、クローズドの2種類の席が用意されています。入ってすぐの壁際、公道側に4室ずつ用意されているのは1名用のクローズドの個室で、特筆すべきは公道の明治神宮側の席。座ると目に前に緑が広がるのです。
デスクには縦にも横にも使える27インチの大型モニターが用意されており、効率よく作業できそう。デスクの脇のフック、手元だけを明るく照らす照明など使い勝手を考え抜いた造りも他では見かけません。
反対側の個室は壁に囲まれていますが、こちらは集中したい時向き。短時間で何かをまとめる場合などに重宝しそうです。
入口近くには、定員8名、50インチのモニターが設置された会議室も2室用意されており、こちらは外部の方も利用できます。面白いのは木目シートのホワイトボード。緑と木というキーワードが徹底されているのです。
オープン席は公道、線路の両側と室内中央に用意されており、計34席。中央の席には27インチの大型モニターが用意されています。中央のテーブルは6mもの長さの一枚板で特注して製作したものとか。柔らかい色合いの椅子はオカムラ、カワジュンの疲れにくいオフィス仕様の品です。
カラースキームはリゾートホテルをイメージし、自分との時間や感性を大切にする人に向けた上質な空間を意識したと福井氏。「家具、色遣いや照明その他細部にまで手を抜かずに自分たちで考えました」。そのこだわりはBGMやトイレ内部にまで及んでおり、内覧で訪れた際にはぜひ、自分の目と耳で確認していただきたいものです。
3D TOUR:スタイルラウンジ
新宿の眺望が楽しめる「スカイラウンジ」
スタイルラウンジに次いで魅力的なのはスカイラウンジと名付けられた屋上。ここには、パーゴラがあってのんびり寛ぐためのリラックステラスや、仕事やランチに使いやすそうな堀こたつ式の席、テーブル席があるルーフテラスのほか、寝転がるための家具が用意された芝生スペース・スカイテラスにドッグランまでが用意されており、その日の気分、やりたいことで使い分けられるようになっています。
Wi-Fiが使え、ルーフテラスには電源が13カ所も用意されているので第二の仕事場として考えても十分。加えて素晴らしいのは新宿の眺望。屋上ですから開放的なのは当然ですが、特にスカイラウンジからの眺めは絶景の一言。我が家に籠って仕事に集中する忙しい毎日でも屋上に上がれば気分一新、気持ちを切り替えられることでしょう。
ドッグランもペットを飼っている人にはうれしい設備。「ドッグランで有名な代々木公園に近い立地でもあり、当物件ではペット飼育が可能。忙しくて代々木公園まで行けない時でも屋上にドッグランがあれば便利と考えて設置しました」。
ペット環境では、1階に用意されたペット専用バスもほとんど見かけない、希少な施設。小型犬であっても我が家でシャンプーするのは大変と用意したものです。
バスタブ脇にはコンセントがあるので、ドライヤーを持参すれば愛犬をその場で乾かして部屋に戻れます。隣にはロッカーが用意されており、愛犬家がドライヤー、タオルその他を事前に入れておくほか、ランニング前に荷物を入れておくこともできます。
1階にはもうひとつ、最近都心でよく見かけるようになった短距離移動時に便利な電動キックボード、電動アシスト自転車シェアサービスのLUUPのポートも用意されます。思いついた時にさっと使えるので、買い物に、ランチに、遊びに重宝するはずです。
開放的な住戸に配慮の行き届いた使い勝手
こうした気配りはもちろん住戸にも及んでいます。住戸は22.23㎡の1K+SICから35.68㎡の1LDK+WIC+SICなど単身からディンクス向きの81戸となっており、一部にはロフト付き、ペントハウスなども。
いくつかの部屋を見せていただいたのですが、共通の大きな特徴は前面に建物がないことです。明治神宮の緑が望める部屋が少なくなく、窓一面に緑が広がる部屋もあり、とても都心にいるとは思えないほどです。カーテンが無くても良いのではと思える部屋もありました。
手間のかかるところにも使い勝手を考えて収納を作るなど、徹底した住む人目線の造りも印象的でした。普通なら途中までしか収納にしないような場所も、天井近くまで使えるようになっているなど「こんなところにも!」と驚くような収納が多く、現場は大変だっただろうと頭が下がりました。
モデルルームは住む人を具体的に想定、その人の暮らしぶりに合わせてあったら便利でうれしいものを用意。使い勝手を徹底的に考えてセンスよく配した結果でしょう、モデルルームはそのまま住みたいと言われることもあるほどの完成度。これも見学時にはぜひ自分の目で確かめていただきたいポイントのひとつです。
もうひとつ、ここまで気を遣うのかとびっくりしたのが内廊下の造り。少し奥まった住戸扉は独立感が強く、我が家への愛着を深めます。上部の壁と巾木の色を揃えて統一感を出す、防火扉などにシートを貼って金属のそっけない感じを消すなど、いずれも賃貸マンションではほとんどやられていないこと。
一見普通に見えて実は手が込んでいる工夫、配慮が随所にあり、徹底的という言葉が思い出されました。単にワークスペースを用意しただけの物件なら世に増えてきていますが、同じ住むなら、ここまで深く考えられ、愛情を持って作られた部屋に住みたいものです。
ロフト付き、開放感たっぷりの住戸も
6階には天井高3.75mという圧巻の開放感を楽しめるロフト付き住戸もあります。特に角住戸のALタイプは玄関を入ったところに衣類を飾りながら収納することができる広いユーティリティースペースが設けられており、ファッション好きなら心が動くのでは。
インテリアのアクセントともなる黒い手すりのあるロフトは8.1畳の広さがあり、照明、コンセントも設置されています。愛猫のために壁際にはキャットウォークも用意されていますが、もちろん、収納として使うことも。これだけの広さがあれば使い方に悩みそうです。
とっておきの一部屋、専用ルーフバルコニー付きペントハウス
最上階の7階に一部屋、ペントハウスがあります。ホームパーティーを意識して作られており、何よりの特徴はリビング。大型キッチンが配され、その先にはアウトドアファニチャーが設置された広いルーフバルコニーが広がっているのです。内と外を出入りしながら楽しめる仕様というわけで、眼下には明治神宮の緑。目を上げれば都心の眺望が楽しめる空間です。
4.3mの大型キッチンは幅も1mと規格外サイズ。集まった人たちでキッチンを囲んで料理、会話を楽しむ姿が想像できます。キッチンのリビング側は収納になっており、食洗器、3口のガスコンロ、ゴミ箱置き場も用意されています。
洗面所にはダブルシンク、バスルームにはミストサウナも用意されるなどリビング以外もスペシャルな造りで、専用エレベーターホールはスカイラウンジにも繋がっています。生活をフルに楽しみたい人向けのとっておき。そんな言葉が似合う部屋です。
360°MOVIE:ペントハウス
取材物件・取材協力
【取材物件】ザ・パークハビオSOHO代々木公園
【取材協力】三菱地所レジデンス株式会社、三菱地所ハウスネット株式会社