「虎ノ門ヒルズ」から変化が始まる?2020年に向けて動き始めた都心改造計画

前回の記事では虎ノ門ヒルズ完成までの経緯と周辺環境、レジデンスを取り上げました。建物そのものにフォーカスしたわけです。しかし、この虎ノ門ヒルズの誕生にはそれ以上に大きな意味があります。今回はこれから2020年までに予想される東京の変化の中で、この場所がどういう役割を果たすのか、管理・運営する森ビル株式会社の方にお話しをお伺いしました。

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湾岸・羽田・都心をつなぐ幹線道路、環状2号線は東京五輪のシンボルストリートにも

立体道路制度の創設、活用によって長らく休眠状態だった環状2号線計画が日の目を見た経緯については前回のコラムで説明をしました。では、環状2号線にはどのような意味があるのでしょうか。道路自体は千代田区神田佐久間町1丁目から江東区有明2丁目をつないでおり、途中に日比谷通り、桜田通り、六本木通りなどの主要道路と交差していることから、都心部のアクセスを向上させるものであることはもちろんです。しかし、最も重要なポイントは最後に湾岸道路とつながるという点。湾岸道路を介すれば羽田はもちろん、成田とも繋がることになり、非常に便利になります。さらに現在建設中の中央環状線とつながれば、都心から放射線状に延びる他の高速道路利用も容易になるはず。都心部の足回りを大きく変える道路というわけです。

また、2020年の東京五輪でいくつもの競技会場が予定される有明と都心を結ぶ道路であることから、この通りがオリンピックのシンボルストリートとも目されており、実際、これまでの東京の通りにはないような利用がすでに始まっています。それが幅13mという歩道を利用した賑わいのある道路づくりです。

幅13mというのはパリのシャンゼリゼには及びませんが、カフェを設置したり、イベントの会場にするなどで賑わいを創出するには十分に広い空間。東京都は東京のしゃれた街並みづくり推進条例といった条例を利用して、それぞれの事業者がカフェなどを設置し、人の集まる空間をつくりやすくするように働きかけています。

何もなかったところに道路が作られたため、現在沿道の建物は道路に背を向けた形となっており、やや寂しい雰囲気。2020年までにどこまで変わるか。エリア全体の協力、変化が必要になってきそうだ
勝どきの運河沿いにある建物の屋上からの風景。環状2号線の途中の橋ができている状況だ(2013年10月撮影)
勝鬨橋から環状2号線を見た風景(2014年7月撮影)
環状2号線
東京都の報道資料より、今後の環状2号線の計画について。主要幹線道路や湾岸道路との関係が分かり、利便性が推察できる(引用:東京都ホームページ

小規模ビルの多かった虎ノ門~新橋が変わる

虎ノ門ヒルズ
建物の下を道路が貫通。地下には500台弱の駐車場が設けられており、5階までがカンファレンス、その上の35階までがオフィスという構成になっており、レジデンスは37階以上

エリアを変える。それは今回の虎ノ門ヒルズ再開発の役割でもあるとは、森ビル広報の渡邉さんの弁。森ビルの中でも有名な六本木ヒルズの再開発と比較することで、今回の虎門ヒルズの開発の方向性が見えてきました。

「六本木ヒルズは敷地内に住居(六本木ヒルズレジデンス)、オフィスはもちろん、美術館、映画館、商業施設その他様々な施設がある、ひとつの街です。そこで私たちは六本木ヒルズでタウンマネジメントという考えにより、常に新しい情報を発信し続けてきました。その結果が、10年以上前のオープン時と変わらぬ年間4000万人の来街者です。それに対し、虎ノ門ヒルズのオープンはこのエリアの開発の”はじまり”ととらえています。今回の開発では、虎ノ門ヒルズだけでなく、周辺のエリアも含め、どのような街づくり、街の運営が必要とされているのか、というエリアマネジメントに挑戦しています」(森ビル株式会社 広報 渡邉氏)。

港区内だけで10年に10以上のプロジェクト、住宅供給も大幅増の見込み

進行中プロジェクト
港区内、虎ノ門から赤坂、六本木エリアでの開発プロジェクト。今後もこれまで以上に広大なエリアが変わることが予想できる

再開発の変化は虎ノ門ヒルズ周辺だけにとどまる話ではありません。事業主は様々ですが港区内では今後10年間に10以上の開発プロジェクトが動いています。近いところから見ていくと、虎ノ門4丁目の気象庁虎ノ門庁舎、港区教育センターの整備事業、虎ノ門パストラル跡地の再開発計画があり、新虎通りに面する虎ノ門病院も含む虎ノ門二丁目でも計画があります。また、虎ノ門エリアと隣接する赤坂一丁目でも市街地再開発組合が立ち上がっており、環状二号線沿道はまだまだ変わります。

少し離れて一昨年オープンしたアークヒルズ仙石山森タワーに隣接する虎ノ門・麻布台地区でも再開発準備組合ができ、区域内の退去が始まっています。その西側、六本木五丁目西地区は六本木交差点から芋洗坂、鳥居坂下に至る広大なエリア。このあたりが変われば、六本木はこれまでとはまったく違う街になることでしょう。六本木では谷町ジャンクションの近く、南側、六本木3丁目東地区の再開発もあります。その他、小規模なものまで入れるとかなりの数。この10年ですべてというわけにはいかないでしょうが、今後10年間、街並みは日々変わり続けると行っても過言ではない状況です。

現在計画されている再開発の多くはオフィス、商業施設などですが、住宅も大幅に増える予定。「当社は今後10年程度で現在運営している戸数とほぼ同じ約3000戸の供給を考えています」。

現状、虎ノ門ヒルズレジデンスには分譲、賃貸問わず、多くの引き合いが来ているそうで、都心居住へのニーズが確実にあることを証明しています。街並みだけでなく、都心に住む人が増えることで東京がどう変わるか、エリアマネジメントがどのような効果を生むか、楽しみにしたいものです。

取材物件

【取材物件】虎ノ門ヒルズレジデンス
【取材協力】森ビル株式会社

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