2014年の「虎ノ門ヒルズ 森タワー」の完成から6年。2020年1月には隣接地に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が竣工。森タワー竣工時には計画があるとされた日比谷線新駅「虎ノ門ヒルズ駅」も2020年6月に開業しましたし、森タワー内・オーバル広場から虎ノ門方面を見ると、当時は影も形も無かったホテルオークラのタワー棟「オークラ プレステージタワー」に「東京ワールドゲート」がそびえており、正面には「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」工事現場のクレーンも。2023年に向けてまだまだ変わる虎ノ門界隈ですが、全貌が予測できる状態にまでなった今の姿を見ていきましょう。
日比谷線虎ノ門ヒルズ駅完成で交通利便性が向上、虎ノ門駅からは地下通路も
まずは新しく誕生した東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅。これまで東京メトロ銀座線虎ノ門駅から約400m以上地上を歩く必要があったことを考えると、がぜん便利になりました。中目黒方面行の1番線側の改札を出ると森タワー、同ビジネスタワーに直結した出口のある地下道が続き、簡単にアクセスできるようになっています。
また、この地下道は虎ノ門駅の一番出口にまで続いており、虎ノ門駅利用で森タワーなどに向かう場合でも日射、雨を気にせずに済みます。東京メトロでは虎ノ門ヒルズ駅開業時に一度改札を出場する乗換駅での乗換時間を30分から60分に拡大しており、乗換ついでに買い物や飲食を楽しむこともできるようになりました。
ただ、現時点では虎ノ門ヒルズ駅の両側で2023年の完成を目指してステーションタワーが工事中であるため、いくつか不便な点も。例えば、反対ホームに行くためには一度地上に出て桜田通りを横断する必要があったり、ステーションタワー予定地に作られた出口に出た場合には森タワー、ビジネスタワーまで地上を歩かなくてはいけないなどです。
しかしながら2023年にステーションタワーが完成すれば、現在暫定的にホームと同じ地下1階に設置された改札が地下2階に移動、駅両側に設けられる吹き抜けのある広場を介してそれぞれのビルに繋がることになっており、あともう少し。地下、地上で繋がるだけでなく、地上2階の歩行者通路も計画されているので、ビル間の移動はとても便利になるはずです。
交通面ではもうひとつ、ビジネスタワーに設置されたバスターミナルも注目を集めています。ここからは都心から晴海や豊洲、お台場などを結ぶ新たな公共交通東京BRT(連結バスを利用した高速運送システム)が発着することになっており、これまでアクセスに多少の難があった湾岸がぐんと近くなります。空港行のリムジンバスの発着も予定されており、都心の新たな交通結節点というわけです。残念ながら現在は新型コロナウイルス対策などの理由から東京BRTの運行開始が延期されており、使われていない状態です。
ビジネスタワーが竣工、話題の飲食店街には人気店26店舗が集結
続いては2020年1月に竣工、6月からは商業施設もオープンしたビジネスタワー。地上36階建て、地下3階の複合タワーで5階以上はオフィス。4階には大企業の新規事業開発に特化したインキュベーションセンター「ARCH」があり、日本独自のイノベーションエコシステムの拠点となることを目指すとのこと。
独自という意味では2階にできた物販フロアはエリア初とか。個人的には1階に1798(寛政10)年に近江国(現在の滋賀県)で創業、1902(明治35)年に虎ノ門で呉服店を創立した老舗呉服店丁子屋さんが入っている点にまちの歴史を感じました。
ちょっと脱線しますが、同様にビジネスタワーと道を挟んで向かい側にある、1872(明治5)年創業の虎ノ門 大坂屋 砂場もこのエリアの歴史を感じる風景のひとつ。1923(大将12)年に建てられた店舗は関東大震災、東京大空襲などにも耐えて現在は国の登録有形文化財です。開発が進んで風景が大きく変わる中、まちのシンボルである愛宕神社はもちろん、変わらないものがあることが虎ノ門エリアの特徴でしょう。
本題に戻り、ビジネスタワーで人気は3階にある虎ノ門横丁と名付けられた飲食店街。これまで多店舗展開をしてこなかった東京の名だたる人気店、計26店舗が集まっており、開業早々メディアでも多数紹介されています。
店舗それぞれにオリジナリティがあることに加え、道をテーマにしたフロアでは各店がきっちり壁で囲われておらず、どこか路地、屋台を思わせる開放的な空間であることも話題のひとつ。ところどころに立飲みができる「はしごカウンター」、料理を持ち寄れる「寄合席」などがあり、客同士のコミュニケーションを誘発しようという仕掛けも面白いところです(コロナの影響で使われていない部分もありました)。一人で気軽に短時間で楽しむから、カップルで、グループでじっくり腰を据えて、あるいは、はしごしてなど、使われ方は様々で、幅広い年代が集まっていたのが印象的でした。
レジデンシャルタワーなど建設中の建物も多数
森タワーに続き、ビジネスタワーが竣工しましたが、虎ノ門ヒルズエリアではまだ建設が続いています。近いところでは2021年1月に竣工予定のレジデンシャルタワー。54階建ての建物の全体像はすでに見られるようになっており、こちらには森ビルの高級住宅ブランド「MORI LIVING」シリーズの最高峰となる住宅が約550戸予定されています。会員制の「ヒルズスパ」も併設されることになっており、立地は言うまでもなく、それ以外のすべての部分で日本トップクラスの住宅が生まれることになるはずです。
もうひとつ、まだ、建物の姿は見えてきていませんが、2023年7月竣工予定のステーションタワーは地上49階建て、高さ約265mの超高層タワー。前述の虎ノ門ヒルズ駅直結の広場、桜田通り上の歩行デッキなど駅と一体的に開発することでこれからの都市再生のモデルとなることを目指しているそうです。
これらの開発に刺激されてでしょう、虎ノ門エリア周辺では建設現場、建設予定地の看板を多数見ます。規模は様々ですが、ステーションタワーが竣工する2023年までにはまちの風景は大きく変わることでしょう。
それにあたり、思ったことがあります。森タワー、ビジネスタワーともに非常に植栽が豊富で、特にビジネスタワーの下部は緑に見えるほど。これは虎ノ門ヒルズに限らず、周辺の開発に共通するもので、2019年5月に診察を再開した虎の門病院(虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業)、建替え後、2019年9月に開業したホテルオークラも、2020年3月竣工した東京ワールドゲート「神谷町トラストタワー」も緑地をたっぷり取っており、森が生まれたかのように見える場所も。
たとえば東京ワールドゲートでは約5000㎡の緑地空間があり、敷地内には水辺テラスなどもあるとか。このような形での整備が続けば、虎ノ門周辺は都心なのに自然豊かな地になっていくはず。小さな開発でもぜひ、緑を豊富に取り入れていただきたいものです。
2023年にはステーションタワーだけでなく、神谷町エリアにあるアークヒルズ仙石山森タワーに隣接、六本木ヒルズに匹敵する規模の虎ノ門・麻布台プロジェクトも竣工する予定。虎ノ門から神谷町にかけての開発計画が始まった時には遠い未来のように思いましたが、残りはあと3年。その日のまちの姿が楽しみです。
取材物件・取材協力
【取材物件】虎ノ門ヒルズレジデンス、虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー
【取材協力】森ビル株式会社