20年間の高額賃貸住宅の変遷 #後編

2005年から2025年、20年間の高額賃貸住宅の変遷を振り返る記事後編は日本の社会に大きな影響を与えた東日本大震災発災の2011年からスタートします。2020年以降はコロナ禍もあり、社会、暮らし方にはさまざまな変化がありましたが、住宅はそうした変化に対応。常に進化し続けてきました。そのあたりの事情を現場で見て来たケン・コーポレーション国内部の営業員 林田さんに伺います。 

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東日本大震災以降、低層物件にも目が行くように 

日本を、世界を震撼させた未曾有の大災害、東日本大震災をきっかけに住まいの安全への意識が変わり始めます。住宅を選ぶ際の条件のひとつとして防災を強く意識する人も増え、低層物件、防災体制が充実した物件などに目が行くようになりました。

「震災後、2010年8月に竣工したラ・トゥール代官山(渋谷区鶯谷町)に人気が集中しました。それまでの上へ、上へという意識が震災で転換。 高層から低層への動きを受けて全139戸があっという間に埋まり、それ以降もほとんど空きの出ない物件になりました。同物件以外でも東日本大震災を機に低層物件に目を向け、選ぶ方が増えました」。

同物件は広い部屋では150㎡超と突き抜けたサイズ感や広々とした豪華な共用部、平置きの駐車場も人気の要因となっています。

「それまでの10年ほどでタワーマンションが増えたこともあって機械式の駐車場がメインになっていましたが、車のサイズが徐々に大きくなっており、やはり平置きが良いと見直されるようになりました。 

機械式では入らないサイズがありますし、出し入れもしやすい。代官山ではガレージから直接自室に行ける住戸もあり、プライバシーを優先される方に人気を呼びました」。 

近年は駐車場でEV車が充電できるタイプが増えつつあるそうで、今後はそうした設備のある駐車場が選ばれるようになっていくかもしれません。 

防災体制充実、『つよいマンション』が選ばれる時代

安全性では低層物件だけでなく、防災体制の充実した物件の評価も高まりました。 

「2011年の東日本大震災後には『逃げ込める安全な街』をめざすという六本木ヒルズの防災体制が話題になりました。地下の発電システム、災害用井戸、備蓄に加え、日常的に行われている独自の防災訓練などが知られるようになり、安心・安全を考えて『つよいマンション』を選択する方が増えました」。 

翌年の2012年には全243戸のアークヒルズ仙石山レジデンス(港区六本木1丁目)が誕生。防災面に加え、それまで一般的だったオフィスの上層にレジデンスを配するのではなく、安心感のある低層階にレジデンスという配置にも注目が集まりました。 

さらに2014年には全172戸の虎ノ門ヒルズレジデンス(港区虎ノ門1丁目)が誕生。都心中心部での相次ぐ大型物件の登場に地域の見方にも変化が生じました。 

「時代によって供給が増える地域は異なっており、2000年代は六本木ヒルズレジデンス、東京ミッドタウン・レジデンシィズ、ザ・パーク・レジデンシィズ・アット・ザ・リッツ・カールトン東京が立て続けに登場したことで住む街としての六本木の認知度が上がりました。同様に2010年代は新橋、浜松町、虎ノ門といった都心中心部に物件が増え、選ばれるようになりました」。 

オフィス街として知られていたエリアが職住近接の、住める街として認識されるようになったことで街の雰囲気も変わりました。開発によって緑が増えたのはもちろん、道行く人も多様になり、子どもの姿も見かけることも。同エリアではまだ開発が続いており、変化は今後も続きそうです。 

2016年に登場した高額賃貸住宅のお手本物件

2016年には高額賃貸住宅のお手本ともいうべき物件が登場します。東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井レジデンス(千代田区紀尾井町1丁目)です。 

「赤プリ」の愛称で親しまれていた赤坂プリンスホテル跡地に建設されたもので、立地が良いのはもちろん、それ以外にも選ばれる要素が散りばめられた物件で見学時には細部に至るまでの配慮の数々に感嘆したものです。 

「長らく高額賃貸住宅にお住まいになる方々の生の声を聞いてきたという強みを最大限に生かし、ケン・コーポレーションが企画を担当した物件でした。 

駅直結、商業施設、レストラン、ホテル、スパとも繋がったサービスを享受できる住まいで、フィットネスルームやパーティールームなどの共用施設の使い勝手や質、エントランスの雰囲気、平置きの駐車場、ペットの足洗い場など賃貸レジデンスに求められるものをすべてバランスよく網羅。 天井高は2.8m、プレミアム住戸では天井高3.0mに加え、バルコニーの奥行きは約2.0m。

間取りもバリエーションを豊富に取り揃え、どのような層の人にも住んでみたいと思っていただけるものをと検討を重ねました。  

箱として優れている、すなわち内装次第で、何十年でも価値を向上できます」。

コロナ禍で働く場を備えた物件が増加 

この20年間に起きたできごとのうち、まだ記憶に新しいのがコロナ禍です。社会が不安な思いに包まれた時期ですが、この時期には働き方、暮らし方が大きく変わりました。自宅で働く人が増え、住まいの意味を再考、住宅にお金をかけるようになるなど不動産に目が行くようになったのです。それを受けて高額賃貸住宅市場にも変化が起きています。 

「自宅で仕事をするためにそれまでより広いところに住み替える、プラスαで仕事部屋を借りる、仕事に使える共用施設がある物件に住み替えるなどの動きが目につきました。コロナ禍以降の新築物件では同じ広さでも2LDKではなく、3LDKにするなど一部屋増やす動きが続いています。 

また、共用部に仕事ができる場を設けた物件が増え、その代表格と言えるのが2023年に登場した全57戸のForestgate Daikanyama Residence(渋谷区代官山町)です。入居者が利用できる会員制シェアオフィスを棟内のワンフロアに入れたもので、これまでにないサービスが人気を呼びました」。 

同物件では住む場所に働く機能を加えただけではなく、運動する、食べるなどが同じ施設内で楽しめるように設計されており、社会の動きを反映してSDGsも強く意識されています。 

「敷地内はもちろん、各戸にも緑を配するなどこれまで以上に自然を感じる物件となっており、これは今後のトレンドになっていくのではないでしょうか」。 

より良い生活、人生を実現する場としての住まい 

実際、2023年に誕生、都心の大規模開発として大きな注目を集めた麻布台ヒルズ(港区麻布台1丁目)もウェルネスを強調した、緑の大きな庭が印象的な物件でした。住宅としては全320戸の麻布台ヒルズレジデンス A棟その他があり、都心一等地のラグジュアリーな住宅群として広く社会の話題にもなりました。 

「麻布台ヒルズでは予防医療を取り入れるなど、どう健康に暮らすか、より良く生きるかにまで踏み込んだ施設などが用意されており、循環、SDGsも当然のように盛り込まれています。今後は単に生活するだけではなく、生活、暮らしの質をより高めるような住まいが求められていくのかもしれません」 。

麻布台ヒルズは都心にこれまで以上の数の住宅をもたらしました。それだけ、高額賃貸を借りる層が増えたということでもあり、日本の富裕層にはまだまだ伸びしろがあると考えています。 

「かつてより花形だったIT業界、金融業界だけではなく、ユーチューバーが登場、さらに最近ではVチューバーという方々も。アベノミクス以降は起業して育てた会社を売却して財産を築いた人、仮想通貨で成功している人と時代によって高額賃貸住宅に居住される方々の業種は変遷してきました。おそらく今後も時代ごとにいろいろな仕事が生まれてくるはず。そのダイナミズムに期待しています。 

また、高額賃貸住宅はオフィスほど急激な大量供給はありません。社会の必要に応じて今後も緩やかに拡大していくことになるのではないでしょうか」。 

ひとつ、今後に期待するものとしては現状ではあまり認知度が高いとは言えないサービスアパートメントがあります。

「海外ではある程度以上の賃料の賃貸住宅の主流は家具家電の付いたアパートメント。引っ越ししやすく、短期契約もできますし、ホテルに滞在するよりはお手頃。それ以外にも掃除をしなくて済む、レストラン付など生活を便利にしてくれる物件もあるなどメリットは多数。 

この20年間で職住近接が一般的になってきたように、高品質でデザイン性の高い家具・家電を揃えたサービスアパートメントが増えてくればもっと積極的に選ばれるようになるのではないかと考えています」。 

以上、2005年から2025年の高額賃貸住宅の変化を見てきました。もちろん、変化はこれで終わりではなく、今後も社会や住む人にあわせて絶えず変化していくはず。いつの時代にあっても住宅は暮らしの基本。変化に合わせた住みやすい住宅が供給され続けることを期待したいところです。 

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