東京23区は京浜東北線を境に武蔵野台地と東京低地に分かれる
東京23区の地形は大きく台地と低地の2種類に分けられます。台地は都心から西側、荒川から多摩川の間に広がる武蔵野台地で、標高は20m以上。10万年以上前にできた古い土地です。一方、荒川の周辺から東側に広がるのが東京低地。ここは1万年以上前と、地球の歴史からすると非常に新しい土地で、地盤が緩く、関東大震災では大きな被害を受けました。
都内でこの台地と低地の境界となっているのが京浜東北線。実際に大宮行きの京浜東北線に乗ってみると進行方向の左側、つまり都心側の土地が高く、右手、東側の土地が低いことが分かります。特に上野から赤羽にかけての区間は高低差が大きくなっています。また、武蔵野台地の西の端、多摩川沿いも低地で、大田区、世田谷区にかけて広がっています。
都心10区は武蔵野台地上にあり、かつての川が刻んだ低地が複雑に広がる
台地と低地の2大別に加え、都心部にはもう2種類の地形があります。ひとつは湾岸エリアの埋立地で、中央区、港区、大田区の臨海部に広がっています。埋め立てられたのは江戸時代以降。徳川家康入府の時期には江戸城から海側は入江だったそうです。
もうひとつは、武蔵野台地を神田川や目黒川、その支流である呑川などが削ってできた谷底(こくてい)平野。台地の中に樹枝状に入り組んでおり、それが都心の坂の多い地形を作っています。現在は暗渠となっている川も少なくありませんが、かつては多くの河川が武蔵野台地上を流れていたのです。
【港区】西に台地、東に低地。急坂も多い地形
京浜東北線に沿って、西側は武蔵野台地、東側には低地が広がっています。港区の中央を東西に横切っているのは古川で、この河川沿いには低地が分布。かつては小規模な工場なども密集していました。六本木から麻布十番、青山三丁目から西麻布などのような急坂が多い地形です。
【渋谷区】渋谷駅中心に南北Y字型の低地
かつて渋谷区には、新宿御苑から現在の明治通り辺りを渋谷川(下流は古川)が流れており、代々木公園を回り込むように流れる宇田川と渋谷駅近くで合流していました。そのため、渋谷区の地形は渋谷駅を中心にY字型に代々木公園を挟んで2つの谷があり、それ以外は台地となっています。
【千代田区】皇居西側が台地、丸の内北側には低地が続く
千代田区の地形は皇居から西側の外堀通りの手前までが武蔵野台地上にあります。一方、丸の内・大手町から北側の神田・秋葉原にかけては低地になっています。日比谷周辺はかつて入江だったそうで、徳川幕府成立直後に埋め立てが始められています。
【新宿区】2つの高台。神田川、妙正寺川が谷を刻む
新宿区は武蔵野台地のなかでも、淀橋台(区の南側を占め、新宿駅周辺から神楽坂・飯田橋方面へ延びている台地)と、豊島台(区の西側を占め、高田馬場方面に伸びている台地)と呼ばれる2つの高台上にあります。台地を刻んでいるのが2つの河川です。ひとつは、区の西の端に沿って東へ流れる神田川。もうひとつは、神田川と西落合で合流する妙正寺川。新宿周辺は関東大震災時に被害が少なかったことが現在の繁栄につながったと言われますが、地形図からも安定した高台にあることが分かります。
【中央区】低地・微高地が大半。海に向かって広大な埋立地
江戸時代は海に面した低地が大半だった中央区。とはいえ、銀座から北側の日本橋・三越前にかけては微高地になっており、江戸時代にはすでに埋め立てられていました。そのため、銀座は標高は高くないものの、地盤自体は比較的締まった砂層が続いており、安定していると言われます。
【目黒区】目黒川・呑川などが刻んだ地形。緑道は河川跡
現在の目黒区で川といえば桜の名所でもある目黒川を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、以前は目黒川の支流「羅漢寺川」や碑文谷池から品川区に流れる「立会川」、世田谷区桜新町あたりに発し大田区を横切って東京湾に注ぐ「呑川」など、多くの川が流れていました。現在は大半が暗渠になり、緑道として活用されています。
【品川区】東海道の東側はかつて海、西側台地には深い谷
JR品川駅から京急線鮫洲駅、JR大森駅をつなぐラインの西側には台地が、東側には低地が分布する品川区。東海道(現在の第一京浜道路)より東側は海だったと思えば、分かりやすいでしょう。また、台地には目黒川その他の水路が谷を作り、高台には住宅街、低地には商店街が広がる場所となっています。
【文京区】低地を隔てて東に台東区、南には神田川
武蔵野台地の東の端にある文京区。区の南側には神田川が流れており、南北に刻まれた谷はかつての神田川に流れていた支流が刻んだもの。図の右、東側の台東区との区境の流れは不忍池に注いでいました。本郷通りを中心に細長く続く、東京大学のある台地は「本郷台」と呼ばれ、大学に隣接している「弥生」は弥生式土器の名称の元となった土器が出土した場所。古い土地であることが分かります。
【世田谷区】武蔵野台地の西端、多摩川支流に沿って低地も
武蔵野台地の西端部に立地する世田谷区では多摩川に注ぐ仙川、野川、谷沢川などが台地を削り、複雑な地形を作っています。また、南側には目黒川も流れており、その中間にもかつてあった河川が谷を作っています。目黒区同様、川の跡は緑道になり、桜の時期には賑わう場所も少なくありません。
【大田区】西は独立した高台。多摩川・東京湾沿いは低地
大田区はJR大森駅と東急池上線池上駅を結ぶ池上通りの西側から、多摩川沿いを走る多摩堤通りの北側が台地となっています。そのうち、区の西の端、世田谷区に接しているのが、狭いながらも非常に高く、独立した台地「田園調布台」。その東側には久が原台、荏原台と呼ばれる台地もあり、静かな住宅街であることはよく知られています。
首都圏では建物が立て込み、地形も大きく変わっていることがあり、ぱっと見ただけでは元々の姿を想像するのが難しくなっています。しかし、地形図や現地の高低にはそれを知る手がかりが残されています。安全確保のためには利便性その他の条件に加えて、チェックしてみていただきたいところです。
※記事中で利用した地図はGoogle Earth、東京地形地図、ゼンリンの地図情報の情報を重ね合わせ、解説に必要な地名などを付加したものです。区によって縮尺が異なり、見にくい点がある点をご了承ください。