昭和21年(1946年)に都市計画決定以来68年、ようやく完成した環状2号線、そしてその通りをまたぐようにそびえる虎ノ門ヒルズが開業早々から話題になっています。ここでは37~46階に配されたレジデンスを中心に、その歴史と立地、住まいとしての魅力を見ていきましょう。
首都復興の夢が国際競争力向上に姿を変えて実現
都市計画から68年、長らく幻の計画と揶揄されながらもついに完成した環状2号線。多くの人はマッカーサー道路なる通称を聞いたことがあるでしょうが、これは歴史的に大きな誤り。もともとは後藤新平らによる関東大震災後の帝都復興計画にあった都市計画道路で、その計画が昭和10年代に復活、戦争中には延焼防止帯として建物疎開が行われ、終戦後にその空地を利用する形で幅100mの道路(その後、昭和25年に幅員を40mに変更)として計画決定されたもの。首都復興の夢が託された計画だったのです。一方、マッカーサーは敗戦国にこれほどまでの道路は不要と、逆に反対の立場だったそうです。
ところが、この区間は虎ノ門と神谷町のちょうど中間に位置する立地。土地としての価値が高く、そこで生活を続けたい人々の希望もあり用地買収は難航し、計画は長らく中断したままとなっていました。それが変わり始めたのは平成元年(1989年)の法改正です。道路の上に建物を建てることを可能にする、立体道路制度が創設されたのです。この制度を利用して計画は動き始め、平成10年には平面街路から地下トンネルへと環状2号線の都市計画が変更、平成14年には事業協力者が決定と進み始めます。とはいえ、広範な地域での再開発のため、完成までにはそれからでも10年余がかかり、虎ノ門ヒルズの竣工は平成26年5月となりました。2020年の東京五輪に向け、国際競争力向上が課題とされるタイミングというのは面白い巡り合わせかもしれません。
霞ヶ関、六本木、日比谷、芝、汐留……官庁街、オフィス街の中心に立地
続いて立地を見ていきましょう。まずは公共交通。網の目のように張り巡らされた都心の地下鉄網の中心に位置する虎ノ門ヒルズ。北に銀座線虎ノ門駅があり、南に日比谷線神谷町駅、さらに都営三田線御成門駅など複数路線、複数駅を利用できる上、今後、日比谷線新駅の整備計画もあります。
道路としての環状2号線自体は江東区有明2丁目から千代田区神田佐久間町1丁目に至る道路で、現在供用されているのは今回開通した新橋5丁目から虎ノ門1丁目(地下トンネル含む)区間と江東区有明2丁目から豊洲6丁目、虎ノ門2丁目の特許庁前から千代田区神田佐久間町1丁目(外堀通り)まで。途中、建設中の部分もあるものの、完成すれば都心の主要な街をつなぐ幹線道路になります。また、この通りは外堀通りはもちろん、日比谷通り、桜田通り、六本木通りなどの主要道路とも交差しており、都心及び東京を起点に日本国中、世界への移動にも便利です。
都心ながら周囲には緑地も多いのが特徴。上階から眺めてみると日比谷公園、皇居、芝公園、愛宕神社などの緑が望め、東京都心の豊かさが実感できます。虎ノ門病院や慈恵会医大病院などの病院、ホテルや商業施設も多く、都会に住む利便性を享受するにはこの上もない立地でしょう。
ホテルのサービス、共用部も住まいの一部、プラスアルファがうれしいレジデンス
最後にレジデンスの魅力を見ていきましょう。住宅が位置するのは37階から46階。50m2前後の1LDKから240m2の3LDKまでの172戸が用意されており、メインとなるのは2LDK。内覧させていただいた部屋は139.6m2の2LDKで賃料は140万円~。西北の角部屋にあたり、大きく窓を取ったリビングからは皇居や日比谷公園の緑が見下ろせます。東西南北いずれの部屋も異なる風景が望めるので、どの部屋を選ぶか、選択には悩みそうです。
室内ではフローリングとカーペットを組み合わせたリビングや鏡面仕上げの建具、陰影のある壁材など、細部にこだわった質の良さが印象的。ニュアンスのある白を基調としたインテリアとなっていましたが、ブラウンが基調になる部屋もあるなど、インテリアも数タイプ用意されています。
ここならではの居住性能としてあげられるのが、37階と47階以上にある、日本初登場のホテル、アンダーズ東京を我が家の延長として使えるという点。居住者は24時間利用可能なルームサービス、ホテルシェフによるケータリング出張サービスなど、ホテルのサービスを受けることができるのです。また、37階にあるホテルのスパその他の施設も共用部として利用できるので、虎ノ門ヒルズでは住まいは自室の空間以上に広いものと言えそうです。
もちろん、セキュリティや耐震性能など、暮らしの安全を守る体制も整っています。印象的だったのは、ライブラリー風に設えられたフロントです。天井が高く、クラシカルなインテリアは外の慌ただしい世界とは一線を画す落ち着いた雰囲気。都心での暮らしはともすればオンとオフが切り替えにくくなりがちですが、この空間が自室との間にあれば、気分は大きく変わるはず。こうした気遣いが都心での暮らしを快適にしてくれるのでしょう。
取材物件
【取材物件】虎ノ門ヒルズレジデンス
【取材協力】森ビル株式会社