東京都心で和の情緒を感じて暮らす

2010年に経済産業省内にクール・ジャパン室が設けられて以来、日本独自の文化を再考する動きが強まっています。東京五輪誘致ではおもてなしを中心に和の心がアピールされましたし、2013年の住生活月間(国土交通省主催)は「和の住まい」がテーマ。そこで、ここでは都心で和の情緒を感じながら暮らせる街を取り上げてみました。

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【日本橋・神楽坂】街並みに和を感じる街

大手町や新宿などの高層ビル群だけを見ていると気がつきにくいものの、実は東京には意外に多くの、古い日本の風景が残されています。浅草に代表される下町エリアはもちろんですが、東京都心部にも和を感じる街並み、寺社、公園が多数点在しているのです。

東京の和の街並みとして代表的なものといえば、日本橋人形町でしょう。ここは江戸時代、明暦の大火で浅草寺裏に移転するまでの吉原遊郭があった場所で、今も残る大門通りの名称は廓の入り口にあった吉原大門から来たもの。その後も芳町と呼ばれる花街として栄え、昭和初期には300軒余の料亭、待合などがあったそうで、歩いてみるとその昔を彷彿とさせる建物が点在しています。

芸者新道(小菊通り。人形町通りから日本橋小学校までの約100mほど)のように、雰囲気のある飲食店が並ぶ通りなどもありますが、日本橋では人形町に限らず、路地をちょっと入ると、木造の日本家屋などが点在。古い街であることがよく分かります。日本橋だけでなく、明治時代には銀座よりも栄えたという神楽坂や、赤坂なども元々は花街で、似た風情があります。

水天宮
安産祈願で知られる日本橋蠣殻町の水天宮。通りにはビルの立ち並ぶ水天宮界隈だが、一本入れば銭湯が残り、昔ながらの豆腐屋さんなどもある

【品川・高輪】江戸時代の味覚も楽しめる街道沿いの街

街道沿いにも歴史を伝える街があります。有名なのは東海道沿いの品川宿と呼ばれるエリア。京浜急行線北品川から青物横丁にかけては当時の道幅のままに街道が残されており、沿道には寺社や歴史を感じる商店、石畳の路地などが点在しています。

また、品川浦は江戸城に新鮮な魚介を献上する御菜八ヶ浦として指定されていた漁港でもり、今もこのエリアには江戸前の天ぷらや寿司を売りにする店が残されています。同様に海苔栽培の歴史を伝える海苔店も多く、味覚からも江戸を感じることができる街です。

東海道ほど有名ではありませんが、風情があるという意味でお勧めしたいのは高輪にある、旧奥州街道沿いのメリーロード高輪周辺です。通り沿いには由緒ある寺社、和菓子店などが多く、少し坂を下ると赤穂浪士で有名な泉岳寺も。目黒通り沿いにある清正公大祭など伝統あるお祭りも健在です。

海雲寺
京急青物横丁駅近くにある海雲寺。江戸時代から火と水の神、荒神様を祭ってあることで知られ、3月、11月に大祭が行われる

【麻布十番・芝・赤坂・神田】老舗が集まる街

寺社を中心に発達した門前町の中にも、今に風情を残す街があります。たとえば、初代アメリカ公使館として使われたことで有名な、麻布山善福寺の門前町として発展した麻布十番。この街には江戸、明治時代に創業した老舗が多く、蕎麦屋、豆菓子店、石材店、床屋、薬局、呉服店などと業種も様々。店構えは新しくなっているところが大半ですが、一部は雰囲気を残した作りになっており、味、技術に歴史の重みを感じます。

増上寺、芝大神宮を中心に発展してきた芝大門から芝公園にかけてのエリアや、日枝神社、豊川稲荷、氷川神社など意外なほどに寺社の多い赤坂、神田明神、湯島天神などのある神田エリアなども同様に老舗が多く、夏には寺社境内で盆踊り大会が開かれるなど、五感で和を楽しむことができます。

芝公園
明治6年に作られた日本で最古の公園のうちのひとつ、芝公園。もともとは増上寺の境内だった土地で桜の名所としても知られる

【汐留・小石川・本郷】大名庭園を我が家の庭代わりにする街

都内に残る大名庭園近接地に住んで、そうした庭を我が家の庭にしてしまい、和に触れるという手もあります。たとえば、汐留。再開発で生まれ変わったこの街の隣にあるのは、江戸時代の代表的な大名庭園といわれる浜離宮恩賜公園です。広大な日本庭園内には海水を導いて作られた池、茶室などがあり、ぼたん園や花畑では四季も感じられます。

都心部では他に小石川後楽園、六義園、一部しか現存していないものの松濤鍋島公園や東大構内の三四郎池周辺なども大名庭園の名残りです。

以上、代表的な例をピックアップしましたが、都心には思った以上に和の情緒が残されています。インターナショナルな街広尾には寺町がありますし、寺社を挟んで立つタワーマンションでは座禅修行もできます。いつもの東京を違う視点で見直してみると、新しい発見があるかもしれません。

スカイハウス浜離宮 24階からの眺望
浜離宮近くではビルだけでなく、海、緑の眺望も楽しめる。四季の移り変わりを自室から感じる贅沢さは都心ならでは

取材物件

【取材物件】スカイハウス浜離宮

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