子育て世代や個性的な店舗の増加、マルシェの開催と、近年、話題になることが多い日本橋浜町に新しい賃貸住宅が誕生しました。再開発エリア・トルナーレ日本橋浜町と清洲橋通りを挟んで向かいあう、「HAMACHO APARTMENTS」です。竣工後ほどなく満室になったものの、いまだに問合せ、申込みがあるほどの人気の秘密を見ていきましょう。
緑の外観にホテルと共用のエントランス、他にない作りが印象的
この物件の何よりの特徴はホテルと賃貸住宅がひとつの建物の中にあるという点。建物全体は「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」というわけです。しかも、清洲橋通り側から見ると他のビルとは全く異なる、全体が緑に溢れた外観。不思議そうな顔で見上げて行く人も多く、中にはわざわざ建物を見に横断歩道を渡る人も。建物の回りにも様々な種類の植栽があり、そこだけを見るとオフィスの多い日本橋の風景とは思えません。
ホテルのエントランスは宿泊者も住宅入居者も使える空間。ゆったりとしたソファなどが置かれたラウンジがり、空間の存在自体がうれしいことに加え、24時間誰かしらがいるホテルならではの安心感を、住む人も享受できます。ホテルと住宅が同じ建物内にある物件は他にもありましたが、エントランスの共有は非常に珍しいケース。互いに相乗効果がありそうです。
エントランス左手には青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」などを手掛ける株式会社ブルーノート・ジャパンがプロデュースするカフェ・ダイニング・バー「SESSiON」(セッション)があり、朝食からランチ、カフェ、ディナーや、お酒をちょっと一杯までと多様な食のニーズに対応しています。下町っぽさもある浜町の雰囲気に合わせ、気軽で小粋なメニューが揃うと評判で、我が家から降りてくるだけで美味が楽しめるのはこの物件ならではの魅力です。
また、エントランスにはいつも音楽が流れており、1階にあるチョコレートショップ「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」からはかぐわしい香りも。五感を刺激する空間が生まれているわけで、この辺りも複合施設ならではの魅力でしょう。
入居者専用エントランスでセキュリティに配慮、在宅ワークを支援する個性的なクリエイティブルームも
フロントから奥へ向かうとホテルとは別に、賃貸住宅の鍵がないと入れない仕様になった入居者用のエントランスがあります。都心居住ではセキュリティは大きな関心事ですが、ここではエレベーターホールに入る時点で最初の関門があるわけです。また、ホテルのエントランスとは別に入居者用のエントランスも設けられています。
住宅は2階から15階までの108戸となっており、2種類のタイプの部屋が用意されています。まず、2階から4階までは在宅ワーク支援住宅で、クリエイティブルームと呼ばれるタイプ。5階以上はオーソドックスなエクゼクティブルームです。間取りはいずれも30㎡台の1Kから63㎡強の2LDKまでとバリエーションがあります。
珍しいのは4階までのクリエイティブルームです。事務所登記はできないものの、打ち合わせや仕事場、アトリエなどに使えるスペースと、住居スペースが分かれているタイプの部屋も設定されています。クリエイターやスタートアップの企業の方などに入居して欲しいということから、シェアして借りることもできるのが新しい試み。若手のアーティストなどであれば、一人でこのエリアに事務所と自宅を借りるのは難しいこともあり、であれば何人かで借りるようにしようというわけです。自宅でリモートワークをする人などにも使いやすそうです。
そうしたクリエイティブな入居者を意識して、インテリアも一般的な賃貸住宅からするとかなり個性的。天井は一部あらわしで高く取られており開放的な雰囲気ですし、床は新品にも関わらずダメージ加工した材が使われており、土足で利用もできるようにと耐久性の高いものだとか。
さらに面白いのが間仕切りに使われているガラスのスライドドア。極限まで細く作られているというフレームを使っており、ブティックなど美意識の高さが決め手になる場所で使われることが多いというもので、すっきりとシャープな印象です。キッチンもステンレス製で無駄のない構造になっており、センスの良さが際立ちます。また、入口脇の収納やスイッチプレートなど細部にまで気を配ったデザインになっていることには驚かされました。
360°MOVIE:クリエイティブルーム C2タイプ
想定以上のスピードで入居者決定、空室ゼロでも申込みのある人気物件
2019年の竣工前から募集を開始しており、当初想定より速いスピードで入居が決まったと、東急住宅リース株式会社ソリューション事業本部資産受託二部の上杉祥紀氏。「大手町や茅場町に勤務する証券会社の方、地元で自営業を営む方、デザイナーやIT系など幅広い方に関心を持っていただきました。内見いただくと、完成前の予想図よりも実物のほうが良いという感想も多くいただきました」。
また、クリエイティブルームは比較的低層にあるにも関わらず、最上階と同じ価格設定。ところが、間取り、インテリアなどの面白さに惹かれてか、この部屋を希望する方が多かったのだとか。ファミリーで借りた方もいらっしゃるそうで、今は入居者が自分なりの使い方を考えて部屋を選ぶ時代であることを実感します。印象的な部屋であれば、実は多くの方に選ばれるのかもしれません。
その結果、6月の時点で満室になっており、人気のほどが分かります。上杉氏は「日本橋にはクリエイティブ、クラフトというイメージがあります。実際、クリエイターやスタートアップの企業の方からの問合せは想定より少なかったものの、単身、ファミリー、さまざまな層の方にご入居いただいています。今後はよりアピールし、クリエイターやスタートアップの企業の方にも借りていただけるようにしていきたいです」とのこと。今後、まちのイメージが定着してくればさらに人気アップに繋がるかもしれません。
もうひとつ、ホテルの人気も相乗効果になっているように思えます。開業後に訪れてみると外国人旅行者が多く、聞くとデザイン性の高さが評価されているのだとか。そのため、一般的なビジネスホテルとは雰囲気が違い、どことなく知的。入居している人にとっても同じ建物内に訪ねてきた友人や親戚などに泊まってもらえるのはメリットのひとつ。ここでも複合的な建物の可能性を感じます。
取材物件・取材協力
【取材物件】HAMACHO APARTMENTS
【取材協力】東急住宅リース株式会社