スマートホームという言葉をよく耳にするようになりました。住宅の中にある住宅設備や家電製品をインターネットで繋ぎ、スマートフォンアプリや音声でコントロールするなどによって快適な暮らしを実現する住まいということだそうですが、実際のところどこまでのことができるのでしょうか。三菱地所株式会社が開発した総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」が導入され、未来の暮らしを体験できるという「ザ・パークハビオ麻布十番」を、三菱地所レジデンス株式会社賃貸住宅計画部の菅井佑大氏、三菱地所ハウスネット株式会社プロパティマネジメント業務部の川上達也氏のご案内で見学してきました。
「いってきます」でエアコンとテレビがオフ、ロボット掃除機が動き始める
ザ・パークハビオ 麻布十番の各室に導入されているスマートホーム機器は3種類あります。ひとつはライナフ社製のスマートロック「NinjaLockM」、赤外線で稼働するエアコンやテレビを操作するためのリモコンとして利用するLiveSmart社製の「LS Mini Next」、そしてGoogle アシスタントを搭載したスマートディスプレイ「Google Nest Hub」。
三菱地所株式会社が開発した総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト、以下ホームタクト)」を利用することで、外からはオリジナルアプリで、部屋にいる時にはアプリに加え、Google Nest Hubを通して音声で機器類をコントロールできるようになります。
「ホームタクトの特徴はスマートフォンアプリと音声で様々な住宅設備、家電製品を一元的にコントロールできること。これまでもエアコンやテレビを個別にコントロールできるアプリはありましたが、機器ごとに異なるアプリを設定する必要があり、便利なようで意外に不便。そこをホームタクトはひとつのアプリでメーカーを横断した複数の機器類をまとめて操作でき、分かりやすく、簡単です」。
複数操作の実例を見せていただくために最初にお邪魔したのは1K(SCタイプ)のモデルルームです。ホームタクトでは生活のシーンごとに何をしたいかをアプリで登録することができるのですが、それを実演していただきました。
まずは「いってきます」のシーン。「Google Nest Hub」に「いってきます」と声をかけると自動的にエアコンとテレビと音楽スピーカー※1がオフ、ロボット掃除機※2が掃除を始めます。毎日同じように繰り返す行動はこうやってセットしておけば、手間が省けます。
※1 ※2 テレビ、音楽スピーカー、ロボット掃除機は入居者が自分で用意する必要があります。2021年12月現在、音楽スピーカーは「Sonos」、掃除機は「Roomba」がホームタクトに対応しています。対応機器は順次拡大予定です。
続いては「おやすみなさい」のシーン。「おやすみなさい」の言葉に「Google Nest Hub」が「アラームは何時にしますか?」と聞く設定にしておくと自動的に目覚ましの設定が完了。あわせて音楽スピーカーがヒーリング音楽を流すようにしておけば、気持ちよく眠りにつけるというものです。
「おはよう」のシーンでは好きな音楽で起きる設定にしておくのも良さそうです。また、その日の天気と温度を教えてもらえるようにしておくと、何を着ていくかを考える際の参考になります。毎朝同じテレビ番組を見ている人なら、マイルールで時間になったらテレビがつくようにしておけば、見逃しがありません。
「シーン設定は自由にできますので、自分の生活に合わせたオリジナル設定が可能です。また、アプリからもシーンを稼働させられるので、外から室内の機器を複数動かすこともできます」。
照明やお風呂、カーテンをアプリや音声でコントロールできる部屋も
続いて訪れた2LDK(SAタイプ)と1LDK(NHタイプ)のモデルルームでは前述のスタンダードな設備に加え、照明、お風呂のコントロールができるようになっています。
「あらかじめ『ただいま』のシーンとして照明点灯、お風呂に湯を張る、部屋を暖めておく、音楽を流すなどを設定しておきます。さらに帰宅時、最寄り駅を通過したところで、マイルールによりそのシーンと同様の操作をGPSに連動して実行されるようにしておくと、寒くて暗い部屋ではなく、温かく明るい部屋に気持ちよく迎えてもらえるようにできます」。
それ以外でも冬の寒い時期にぬくぬくのベッドから出ることなく、音声で照明を消したり、映画やテレビ番組を見終わったところで入れるようにお風呂を用意したりと具体的にどう使えるかを考えてみると便利さが実感できます。
また、この部屋ではカーテンの開閉もシーンに組み込めます。
「音楽とともにカーテンが自動で開く設定にしておけば、朝日を浴びて快適に一日を始められるようになります。『おはよう』という一声で部屋が目を覚ますのです」。
カーテンそのものは入居者が自分で用意する必要がありますが、どんなカーテンでも利用できるので引っ越し時に好きな品を購入すれば問題なく使えるようになります。
360°MOVIE:SAタイプ
淹れたてのコーヒーの香りで目覚める朝を目指して
快適な朝の風景を想像すると、欲張った気持ちが出てきます。淹れたてのコーヒーの香りで起きるような設定はできないのでしょうか?
「現状は利用ニーズの高い機器に限定していますが、今後拡充していきたいと考えています。使える機器類が増えれば雪だるま式に便利になるはずですから、当社の物件にとどまらず他社の物件にも使っていただいて、最終的には生活そのものを変えるプラットフォームにしていければと考えています」。
360°MOVIE:NHタイプ
日本でのスマートホーム普及への試金石としての役目も
もうひとつ、今回の取組には日本でスマートホームにニーズがあるのかを探る意味もあるといいます。
「アメリカで普及しているのは家が広いため。移動せずに住戸内をコントロールすることにニーズがあります。ですが、日本の住宅に同じニーズがあるかどうか、ザ・パークハビオ 麻布十番では実験的な試みも取り入れています」。
それが一部の部屋の玄関に配されたカメラ※3です。ザ・パークハビオ 麻布十番のスマートロックは物理鍵、暗証番号、アプリと様々な方法で開け閉めができるタイプ。スマホの充電が切れても他の方法で開けられ、もちろん、外からのコントロールも自在です。
※3 カメラはホームタクトとは異なるアプリを利用いただきます。
アプリによる外からの解錠、施錠によって、住んでいる人が外出中でも来訪者を自宅に入れることができるようになります。友人や親戚が来た時、ハウスキーパーやペットシッターなどを利用する時に便利だろうと思いますが、もうひとつ、宅配利用時に室内に置き配※4をしてもらうという手があります。
「アメリカではすでにスマートロック利用で配達時に解錠、荷物を室内に入れてもらってから施錠というやり方が一般的になっています。その時の安全を担保するために玄関にリアルタイムで人の動きを確認できるようにカメラを配しているのですが、日本では自宅に人を入れることに抵抗があるという方もいらっしゃいます。
そこで、一部の住戸にカメラを設置しました。もちろん、利用はその方次第。使いたくないということであれば、そのままにしておいていただけば良く、使いたい方だけに使っていただくようにと考えています」。
※4 2021年12月現在、室内への置き配サービスは宅配業者により利用できない場合があります。また、共用部での置き配は館内細則で禁止されております。
最近はスマートロックも各種出てきていますが、ザ・パークハビオ 麻布十番のものはドアに据え付け型で電池駆動という点が特徴。停電時にも使えるのです。電池残量もアプリから確認できます。
共用エントランスにも同じメーカーの製品が採用されているため、自室も、建物エントランスもキーレスで利用できます。※5
※5 館内細則上、お部屋や建物から出る際には物理鍵の携帯をお願いしております。
入居者の声で進化を促進、不動産のジャンルを超えた未来を
複数のリモコンを不要にし、1台のスマホで家電類などのコントロールを可能にするホームタクト。慣れないうちは使いこなせるか、不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。それに対しては解説のパンフレットのほか、ホームタクト専用のコールセンターも設けられており、分からない点は気軽に問い合わせることができます。
入居者、不動産会社などへのアンケートでアプリをブラッシュアップしていく計画もあります。
「今後、スマートホームが不動産の枠を超え、生活を大きく変えるインフラになると考えると、進化し続けることは大事。未知の世界を開拓していくためには広く消費者の生の声を聞き、アプリを成長させ続ける必要があると考えています」。
取材前に行われた先行内覧会にはIoTの進化に関心のある方を中心に幅広い年代、職業の方たちが集まったとか。
「本当に様々な方々にお出でいただきました。生活が変わる最初の一歩となる物件と認識されているのだろうと思います」。
バブル期にはホームオートメーションという名称で、似たような試みがありましたが、その時点ではスマートフォンはなく、インターネットにこれだけのことができるという発想もありませんでした。ところが、インターネット、Wi-Fiの普及した今は夢か妄想のように思えることが次々に実現していく時代です。ザ・パークハビオ 麻布十番で今実現する暮らしが、今後徐々にレベルアップし、どんどん便利になっていくとしたら生活の進化の生き証人になれるかもしれません。体験してみたいものです。
取材物件・取材協力
【取材物件】ザパークハビオ麻布十番
【取材協力】三菱地所レジデンス株式会社、三菱地所ハウスネット株式会社