全域が徳川家康による埋立て地。
住宅に被害が及ぶ可能性は低いが、地震、水害を意識した備蓄等は意識したい
徳川家康による埋立てで中央区一帯が誕生
中央区は南を東京湾に臨み、東は隅田川を境に江東区、墨田区と向かいあい、西は旧汐留川と旧外堀を境にして港区、千代田区、北は台東区に接しています。
他区との境がすべて川ということからも分かるように中央区は低地にあり、区域の大半は江戸時代以降に埋め立てられたもの。天正18(1590)年に徳川家康が江戸に入った時点では江戸城のある台地東側は広大な湿地となっており、江戸幕府初期の大事業のひとつはここを埋め立ててまちを作ること。城に対する下の町ということで下町という言い方はこの事業に由来します。
中央区の標高図
(外部リンク:国土交通省国土地理院)
起伏が少なく平坦。土砂災害の危険は心配なし
そのため、地形的には起伏が非常に少なく平坦。都心に立地する区は高低差があり、坂の多いまちが大半ですが、中央区には急坂はもちろん、坂自体もほとんどありません。そのため、急傾斜地もなく、土砂災害の危険はありません。
固い地盤が地中深くにある土地
その一方で低い土地にあることから地震、水害に関しては危険もあります。たとえば地震に抗するため、建物を作る場合には地下にある固い地盤(支持層。固さを示す指標N値が50以上)にまで杭基礎を伸ばし、建物をしっかりと固定する必要がありますが、中央区では支持層が深い場所にあります。
中央区の南側の一部には15~20mという深さの場所もありますが、区内のほとんどの地域では20m以上。長い杭基礎が必要で、建設にあたっては費用が高くなることになります。
ただ、逆に長い杭を打って建物が固定されていれば地震で建物に不測の事態が発生することは考えにくく、建物内にいる分には安全だろうと推測されます。
火災、延焼の危険がない地域内残留地区も
地震に関しては古い建物が路地に密集している地域で建物倒壊、火災発生の危険が高くなります。東京都ではおおよそ5年に一度、地震に関する地域危険度測定調査でその危険を公表しており、中央区内では月島や日本橋人形町の一部で建物倒壊危険度が高くなっていますが、全体としてはそれほど危険な地域はありません。
逆に八重洲、京橋、銀座、明石町、八丁堀、小伝馬町、人形町、浜町、日本橋、茅場町などは火災が発生しても延焼しにくく、広域避難所への非難が不要とされる地区内残留地区とされています。建物倒壊、火災延焼の危険はあまりないというわけです。
東京危険度マップ・避難場所等指定図
在宅避難に備え、備蓄その他には気配りを
一方で高層の住宅が多く、在宅避難を求められるエリアであるため、マンション共用部に災害時の備えがあるかどうかは大事なチェックポイント。また、自宅は安全だったとしても液状化、水道などのライフライン切断などは起こり得ます。それも考えて入居後は食料、水などの備えは忘れないようにしておきたいところです。
隅田川沿いでは5mの浸水想定も
低地であることから水害の危険もあります。中央区では隅田川・神田川・日本橋川と荒川でそれぞれに河川の氾濫などがあった場合の洪水ハザードマップを作っていますが、荒川が氾濫した場合にはほぼ全域が浸水すると想定されています。荒川は隅田川の上流にあたるため、そこでの氾濫はより広範な地域に甚大な被害を及ぼすのです。隅田川沿いなどでは深いところで5mに及ぶと想定されている地域もあります。
この場合もマンションの高層階に居住している場合には自宅に水が及ぶことは考えられませんが、停電が起きる、水が引くまで外に出られなくなるなどの事態は十分想定されます。そのため、地震への備え同様、しばらくの間、自宅で生活できるように備えておくことは大事でしょう。