「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE」HBAのインテリアデザイナーが案内する“明るいラグジュアリー”
2026年3月28日にグランドオープンしたTAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)。かつて海であった高輪の地に、5棟の建物が並ぶ「列島(アーキペラーゴ)」が浮かび上がりました。
そのひとつである「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE(高輪ゲートウェイシティレジデンス)」は、地上44階/地下2階、全847戸の賃貸住戸からなるタワーレジデンスです。本記事ではそのレジデンス館内をご案内いたします。
ガイドは、共有部・専有部のインテリアデザインを全体監修したHBA(ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ)の杉浦篤氏です。HBAはフォーシーズンズ、ザ・リッツカールトン、マンダリン・オリエンタル、カペラなど世界有数のラグジュアリーホテルのインテリアを手掛け、東京の高級レジデンスの内装にも参画しています。
素材・余白・陰影が緻密にコントロールされた空間にアートピースが散りばめられた館内を巡りながら、高輪の眺望と響き合うTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEの多様な表情を感じてください。

2F:MAIN ENTRANCE
インテリアのコンセプト【Wind and Sails】の成り立ちについて
——TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEは、街を構成する5棟のもっとも北側、MoN Takanawa: The Museum of Narrativesの隣に位置します。エントランスは水盤と滝に囲まれ、風が心地良いですね。
HBA杉浦:「風」と「水」は、レジデンスにとって極めて重要なモチーフです。「RESONANCE(響き合い)」をデザインコンセプトにしたこの建築は、タワー全体が水平・垂直のリブとフィンからなる薄い構造物(レイヤー)に覆われています。まるで帆をまとった帆船のように、優美で力強い。
インテリアはこうした外観と呼応しながら、TAKANAWA GATEWAY CITYという街そのものとも連続する物語性を持つ必要がありました。
そこで、共用部・専有部を統一するデザインテーマを【Wind and Sails】としました。居住者の方々にとって、このレジデンスが目には見えない風を力に変える帆船となり、かつて海原であった高輪の地の記憶とともに進んでいく。そうした高揚感と優雅さをあわせもつ生活体験を得られるようにと。
——MAIN ENTRANCEで出迎えるアートピースも、しなやかな風を思わせます。これは曲木でしょうか。
杉浦:京都に住まわれている木工作家様の作品を飾らせていただきました。館内では日本人作家の作品も重要な役割を果たしています。続いてレジデンスの入り口となる、GATEWAY LOUNGEへご案内しましょう。

3F:GATEWAY LOUNGE / CAFE LOUNGE
——GATEWAY LOUNGEはコンシェルジュが常駐するレセプションとエレベーターホールからなる、レジデンスの顔と言える空間ですね。
杉浦:長方形のプロポーションに2層吹き抜けの広さを持つ、レジデンスのシンボルです。この規模の空間は、オフィスロビーのような硬質な印象になりかねません。壁面にわずかに傾けた斜めのラインを配し、天井に波打つような抑揚をつけて空間全体に動きを持たせました。

——天井高と抜けの良さがあり、石材の壁に支えられていながら、重くならず穏やかな印象を与えています。
杉浦:地層を感じさせる美しい縞模様が特徴の、トラバーチンという大理石です。明るく暖かなトーンのトラバーチンを揃えるのはやや苦労しましたが、この空間には欠かせない素材でした。
レセプションとエレベーターホールには大きなゲートとしてのフレームを設け、波しぶきを抽象化した格子スクリーンを組み込んでいます。昼間は柔らかく光を透過し、夜には照明と一体となってドラマチックな陰影を生み出し、時間帯によって異なる表情を見せてくれます。
天井には海の上を飛ぶカモメをイメージしたモビールを浮かばせました。薄いアルミニウム製の軽やかなモビールは、視線にリズムを与えながら奥へと導くラウンジのアイコンになっています。


——その奥には、コーヒーマシンを備えたCAFE LOUNGEが隣接しています。こちらはよりリラックスした空間ですね。
杉浦:床材を木質に変えて高さも2段ほど上げ、植栽も挟み込んでいます。ソファやクッションのファブリックも柔らかい質感を選びました。開口の窓から高輪を眺めて過ごせる、居住者にとってのサードプレイスの位置づけです。CAFE LOUNGEの壁面にも、揺れる帆をモチーフにした彫刻を飾っています。作家と話し合いながら、【Wind and Sails】を象徴する帆船を表現していただいたものです。



——ワンフロアの中にありながら色・素材・陰影を使い分け、異なる表情を作り出しています。ラグジュアリーホテルをはじめとして、世界のホスピタリティデザインを手がけてきたHBAらしい空間です。
杉浦:私たちがTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEで特に注力したのは、空間の「流れ」と「余白」のデザインです。選び抜かれたマテリアルやアートを散りばめながらも、そのどれもが主張することなく重なり、融け合い、感覚の質に昇華されること。
特に、ホテルとレジデンスでは求められるラグジュアリーのあり方は本質的に異なります。ホテルは非日常の体験を提供する場であるため、到着時の高揚感や瞬間的な強さ、アイコニックな価値が求められます。一方で、レジデンスは都市生活としての日常の延長にある空間であり、長く住み続けるなかで自分が整い、心地よさが持続することが重要になります。次は、4階の共用部へ上がりましょう。
4F:FITNESS & LOUNGE
——FITNESS & LOUNGEは入った瞬間、その眺望に驚かされました。窓の外に新幹線が走り、正面にはMoN Takanawa: The Museum of Narrativesを望みます。
杉浦:共用部のフィットネスエリアの計画にあたって考えたのはTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEの立地と開放感を最大限に活かすことでした。居住者がランニングやバイクマシンを使用しながら眼下を走る線路と行き交う電車の動きを眺め、都市のリズムに一体化しながら体を動かす体験に繋げたい。
人と都市の関係性を感じられる場としての性格は、隣接するラウンジスペースにも表現されています。ゆったりとくつろぐことのできるラウンジチェアとテーブルを配置し、トレーニングの合間に心身を整えるための余白を設けています。
フィットネス空間は運動やトレーニングへのコンセントレーションが高まるよう、閉鎖的な空間が目指されることも多いですね。しかしながら本計画ではあえて視界を開放し、滞在のための場所を設けることで、自然なコミュニケーションや偶発的な出会いが生まれる可能性をデザインしています。


——3階のGATEWAY LOUNGEとは景色も一変し、新たなホスピタリティが宿っています。
杉浦:そうですね。このレジデンスの魅力は、贅沢な立地とTAKANAWA GATEWAY CITY というかつてないスケールの都市計画のストーリーに接続することで、きわめて多様な表情をつくりだせることです。さらに上階に向かう前に、もうひとつの空間の表情を見るために地下に向かいましょう。

B2F:COACH ENTRANCE
——ドアマンが待機するCOACH ENTRANCE。まるで映画のワンシーンのようなエントランスゲートです。
杉浦:COACH ENTRANCEは居住者がレジデンスに帰り着き、マインドがオンからオフに切り替わる場所です。その瞬間をいかに印象的なものにできるか、検討を重ねました。
とりわけ、照明のコントロールは重要でした。他フロアで重視していた開放感から一変し、COACH ENTRANCE前に車が停まるとき、車体に反射する光で空間が完成する。エントランスを囲むウッドのゲートやフロアの石材も含め、車をもっとも美しく魅せることが、自宅に迎え入れる場としてのホスピタリティの表現だと。
——ほかのどの空間とも異なる体験でありながら、照明のあしらいやゲートの形状など縦に走る格子のパターンは、2階のMAIN ENTRANCEや3階のGATEWAY LOUNGEとも共通しますね。
杉浦:ほかにもカラートーンのベースや、細かなデザインのディテールを共通言語として取り入れています。どのゲートから帰ってきても、統一された【Wind and Sails】の物語を感じられるように。次は、専有部のコンセプトルームをご案内します。

専有部コンセプトルーム
——今回、HBAとして専有部も手掛けられています。
杉浦:HBAでは住戸のカラースキームと、コンセプトルーム2室の監修を担当しました。EXECUTIVEはLIGHT BROWN、MOCHA GREIGEの2タイプ、SUPERIORはSNOW GREIGEを合わせた3タイプで構成しています。いずれも強い主張を持つ色ではなく、彩度を抑えたグレー調のブラウンやベージュ、ニュアンスのあるホワイトを基調としています。
EXECUTIVE:EJタイプ×LIGHT BROWN
杉浦:EJタイプは「空と住まう」をテーマにしたEXECUTIVEフロアのプランです。このコンセプトルームは、船の設計者の住まいをイメージし、レジデンスのコンセプトを想起させるような小さな帆船を置きました。ブラウン・ベージュ・グレーのカラーを重ねながら、グリーンやオレンジをアクセントにしています。
SUPERIOR:SCタイプ×LIGHT BROWN
杉浦:SCタイプは「海と住まう」をテーマにしたSUPERIORフロアのプランです。イタリア人デザイナーのセカンドハウスをイメージしました。イタリアモダンの洗練の中に、日本の伝統色である藍色を差し込んでいます。
杉浦:いずれのカラースキームも、インテリアは色や素材などが個性を主張しすぎないことを心がけました。このレジデンスの居住者になる方々は、自分の好きな家具やアートがある方も多いでしょう。それらが置かれた時に最も美しく映える居室を目指しました。
空間が前に出すぎず、天板・壁・扉といった各要素をトーンオントーンで丁寧に重ねることで、単調にならない奥行きと繊細な陰影を生み出し、居住者それぞれのライフスタイルを際立たせながら、静かで持続性のある質感を空間全体に与えています。このツアーの最後に、高層階にある共用部へ向かいましょう。
29F:SKY TERRACE / SKY LOUNGE
——SKY TERRACEは、遮るもののない圧巻の眺望です。
杉浦:SKY TERRACEはTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE唯一の屋外パブリックエリアであり、この空間の主役はレインボーブリッジを見下ろす高輪からの景色そのものです。朝・昼・夜、それぞれに移ろっていく海を楽しむために、すべての五感を揃えました。
カラートーンはモノトーンに近づき、黒・白・グレーが主調となっています。家具も落ち着いて寛げる厚みあるレザーとファブリックを選びながらも、ところどころに抜け感を配して空間が重くならないよう調整しています。
——印象的な壁紙は、和紙でしょうか。
杉浦:はい、下からの照明で美しい陰影が浮き上がります。視線を楽しませながらも、眺望に干渉しない。この静謐な素材感がラグジュアリーな空間のためには必要でした。



29-30F:SKY KITCHEN / SKY THEATER
——29階のSKY KITCHENはエネルギッシュなオレンジ色が映えます。
杉浦:船の甲板をモチーフにしたウッドの連続性、ロープを模した照明。海外のゲストも使いやすいよう、アイランドカウンターとテーブルを一体化させ、作りながら食べる、語り合うというライブ感のあるコミュニケーションの場です。

——30階のSKY THEATERは深海のようなブルーが基調ですね。
杉浦:高輝度のプロジェクターなどの設備を備えたシアターの内装では、席配置にこだわりました。人が集まった時に生まれる親密なスケール感を大切に設計しました。

杉浦:【Wind and Sails】のコンセプトのなかでもっとも遊び心を込めたのが、これらパーティールームのデザインです。
朝の柔らかい自然光が差し込む中でコーヒーを飲む時間や、夕方にゆっくりと移ろっていく光を何気なく感じている時間。開放的であり、静謐であり、パッションあふれるシーンも生まれるでしょう。タワー全体を光やスケールといった身体感覚に関わる要素で統一しながら、外国人、日本人、それぞれの居住者の多様な文化・価値観が無理なく共存できるレジデンスをお楽しみいただけたらと思います。

——ここまでTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEを巡ってきましたが、さまざまな細部にアイコニックになりすぎないよう配慮された日本のエッセンスを感じました。
杉浦:その通りです。いま世界に開かれたレジデンスをつくるにあたって「日本で住まう」体験をどうデザインするかは極めて重要なテーマでした。
共用部の各フロアのアートピースは、エレベーターホールから廊下までおよそ30名の日本人作家に協力いただき、工芸を源流に持つ日本らしい手触りを与えました。紙・木質・石や金属といったマテリアルの扱い、色合いにも和の要素が通底しています。
その一方で、目に入ってすぐにわかる日本らしいビジュアルや色使いは避けています。このレジデンスで「和」を表現するにあたって取り入れるべきは、日本のホスピタリティの精神そのものであるからです。
私たちHBAの原点は、西欧のラグジュアリーなホスピタリティです。TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEでは、それを日本的な感覚に翻訳し、再構築できるかというチャレンジでもありました。
西欧のラグジュアリーは、社交性やサービスの可視化、豪華で重厚な物質感といった明快な価値が特徴です。対して、日本においては過度に主張しない距離感や静けさのデザインに快適さの本質がある。そのため空間としての開放性や流れは取り入れつつ、光や視線のコントロールによって、落ち着きと余白を感じられる環境を目指しました。
その方針は、SKY TERRACEと隣接した居住者同士の交流の場であるSKY LOUNGEや、エネルギッシュで賑やかなパーティールームにも活きています。

「明るいラグジュアリー」と、持続する価値
——TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEプロジェクトを振り返って、お気持ちをお聞かせください。
杉浦:すべての要素を【Wind and Sails】のもとに設計してきたインテリアデザインのプロジェクトは、着手から約8年をかけて完成しました。私自身にも愛着があり、ここを離れるのは少し寂しいくらいです。
この8年の間にコロナ禍があり、世界中で「ラグジュアリー」の定義も変わりました。所有や装飾といった外的な価値から、どう過ごすかという内面的な価値への移行。それに合わせ、デザインを変更した空間もあります。
——重厚で閉じた高級感ではなく、軽やかさと開放性に向かうデザインには「明るいラグジュアリー」といった印象も受けます。
杉浦:そうですね。ラグジュアリーな空間とは、本質的には広さ・大きさ・金銭的価値・希少性などではなく「そこにある感覚の質」をどれだけ丁寧に表現できているかではないでしょうか。
ラグジュアリーは「要素の多さ」ではなく「要素の関係性とバランス」によって成立するのです。素材やスケール、光、動線といった複数の要素が過不足なく整えられ、意識せずとも快適に過ごせる状態が、本物の豊かさです。そのために土地の文化や背景を読み解き、空間体験として再構築することで、ここで日常という時間を過ごしたいと感じるようになる。
TAKANAWA GATEWAY CITY全体のテーマでもある「100年先の心豊かなくらしのための実験場」という言葉ともつながりますが、瞬間的な印象の強さだけでなく、時とともに価値が深まっていく持続性こそがラグジュアリーの本質なのです。
10年、20年経っても飽きが来ず、むしろ時間とともに愛着が深まっていくレジデンス。それが、私がTAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCEに込めたメッセージです。

※2026年5月現在、募集住戸がないタイプがございますのでご了承ください。


取材協力
HBA(ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ)
TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE プロジェクト概要
【事業主】東日本旅客鉄道株式会社
【貸主】株式会社ジェイアール東日本都市開発
【管理】JR東日本レジデンシャルサービス株式会社
【貸主代理】アール・エー・アセット・マネジメント株式会社
【媒介】株式会社ケン・コーポレーション
