子育ては都心で

都心と聞くと緑や自然がなく、子育てには向かないと考える人が少なくありません。しかし、データを見てみると実際は意外に緑が多いことが分かりますし、それ以上に子育て・教育環境が整っているエリアも多く見られます。総合的に考えると、都心は多くの人が思っているよりも、はるかに子育てに適しているエリアなのです。

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イメージと実態に大きな差、都心には緑、公園など自然が豊富

まず環境面を見てみましょう。右図は、都心23区の緑被率(樹木地と草地、屋上緑化された面積を行政面積で割ったもの)を表したもので、ご覧いただくと分かるとおり、「都心=緑が少ない」は必ずしも事実ではありません。中央区や品川区のように、緑が少ない地域もありますが、渋谷区のように緑の多い地域もあり、地域により様々。都心でも場所によっては緑が豊富な地域もあるのです。

緑被率
各区によって緑被率の測定年度や算定方法が異なるため、図中の緑被率は現在の状況と異なる場合があります(引用:墨田区ホームページ)

また、各自治体の一人当たりの公園面積を見てみると、都心が極端に少ないというわけではありません。文京区(1.8㎡)、目黒区(1.7 ㎡)など、大きな公園のない自治体では少なくなっていますが、これは緑が豊富なイメージの強い武蔵野市よりも多いほど。イメージと実態は意外に乖離しているものです。

一人当たりの公園面積

少子化対策で都心各区は子育て支援に力を入れている

次に子育て、教育事情です。少子化は日本全体で進んでいますが、最も顕著なのは東京都。全国平均の合計特殊出生率(一人の女性が一生に生む子どもの数)は1.25ですが、東京都は0.98。当然、子どもを大事にする施策が熱心に推進されています。

例えば、乳幼児医療費助成制度。これは原則として就学前の乳幼児の医療費が助成されるというものですが、実際には自治体ごとに対象年齢、所得制限の有無などに大きな違いがあります。そのうちで、所得制限がなく、対象年齢が引き上げられている自治体が多いのは東京23区。誰にでも利用でき、かつ子どもが大きくなっても助成されるようになっているのです。

特に都心10区では他自治体に先駆けて中学生まで対象となっており、15歳になった後の最初の3月31日まで所得制限無しで助成が受けられます。就学前までの自治体と比べると、実に9年も長く助成があるわけで、その差は歴然です。

また、都心で働くおかあさんのため、長時間保育や病児・病後児保育などを行う保育所が多く、子育てと仕事を両立しやすいのも特徴。例えば品川区では区内に 5カ所の病児・病後児保育施設がありますが、都下では町田市などを除き1市に1カ所程度が一般的。また、同区ではうち3カ所が区の保育所となっており、子育てに熱心な品川区の姿勢がよく分かります。分譲物件ではマンション内に保育所が設置された、預けやすい物件もあり、最近では賃貸でも「THE TOKYO TOWERS」のような大型物件を中心に一部保育所付きの物件が見られるようになってきています。

私立に負けない公立学校を。都心には教育熱心な自治体が多い

子育てだけでなく、都心の自治体は教育にも熱心です。これは都心ほど私立校が多く、公立校にも生き残りに危機感があるため。有名なところで言えば、品川区の小中一貫校。平成18年開校の日野学園(五反田)、平成19年開校の伊藤学園(西大井)には最先端の体育館や設備が揃い、子どもを入学させるため、学区域に引っ越す家族も少なくありません。都心なら、私立以外にも良い教育を受ける手があるというわけです。

同様に難関大学突破を目標に平成18年4月に中高一貫校「九段中等教育学校」を開校した千代田区にも、同校受験のための引越しが目についたとか。区民枠を利用すれば、受験倍率が緩和されるのが人気の要因です。

こうした独自校開設まで至らなくとも、都心自治体では独自の科目を設ける、英語の授業数や教員数を増やすなどの工夫は一般的に行われています。例えば、世田谷区は「日本語」教育特区の認定を受け、教科としての「日本語」を創設。語彙の習得、古典・漢文・近代の名文・詩などの学習から日本文化の理解、国際人としてのマナーの習得などを目標に掲げています。小学校1年生の教科書には地元の民話や宮沢賢治の詩に加え、論語や杜甫の漢詩なども登場するそうですから、うっかりすると子どものほうが美しい日本語を操れるようになるかもしれません。

そして、もちろん都心はどの学校を選択するにしても便利。幼稚園から大学まで多くの私立校も集まっていますから、本人の希望にあわせて進学できます。子どもが生まれた時点から成長のすべての過程で条件が揃う、それが都心というわけです。

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