今知っておきたい、マンションの防災事情「深沢ハウス」

平成19年の新潟県中越沖地震以来、平成20年の岩手宮城内陸地震、岩手県沿岸北部地震、そして震度3、震度4といった地震も含めると、日本列島はここのところ、揺れ続けています。当然気になるのはマンションの防災事情。今回は広大な敷地に複数棟が建つ大規模マンションでの防災事情をご紹介しましょう。

深沢ハウス
駒沢公園に隣接、敷地の約1/3の約1万3000㎡が水辺や緑地空間で構成されている
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揺れを制御する免震構造に加え、ライフラインを補う各種設備を設置

1995年の阪神・淡路大震災を機に日本の防災対策は大きく変化しました。それまでは関東大震災、十勝沖地震と震度に合わせて建物の耐震能力を高めることが、来る地震への備えと思われてきたわけですが、それだけでは足りない、それを広く知らしめたのが阪神・淡路大震災だったのです。

阪神・淡路大震災で私たちが学んだことのひとつが震災後の生活をどうするかという点です。1981年の新耐震以降の建物であれば地震で倒壊する危険性はほぼありませんが、建物だけが無事でも生活はできません。水道やガス、電気といったライフラインが使えなければ、家はただの箱になってしまうのです。そこで最近のマンションでは万一ライフラインがストップした時に備える設備が拡充される方向にあります。

例えば、東京都の広域避難場所でもある駒沢公園に隣接する「深沢ハウス」では全13棟の建物をすべて揺れを制御する能力の高い免震構造にした上、阪神・淡路大震災で問題になった非常時の水やトイレ問題などに各種の工夫が凝らされています。

まず、水問題では敷地内には非常時に地下水を汲み上げる井戸が設置されており、飲料水はここから供給するシステム。EWELLと呼ばれるこのシステムは1時間あたり600リットルの水を供給でき、発電機利用のため、電力が供給されない場合でも運転できるのがポイント。いつでも使えるよう、毎月1回は溜まった水をくみ出す作業も行われており、潤沢とはいえないまでも必要な飲み水は確保されることになっています。もうひとつ、水問題では敷地内中庭の池やビオトープ、防火水槽も大きな存在。これらの水はトイレや洗濯などに必要な生活用水として利用できるようになっており、防火水槽だけで5カ所、約340トンが貯水されています。

水に絡んで重要なのがトイレ。「深沢ハウス」ではマンホールの蓋の上に設置、汚物をそのまま下水道に流してしまえる非常簡易トイレ3基が防災用備品として用意されています。また、敷地に面した深沢ハウスへの提供公園内には非常時に炊き出し用のかまどとして利用できるベンチが5台用意されています。

防災だけでなく、防犯にも効果的と思われるのが、緊急時の連絡手段として敷地内6箇所に設置されているT型インターフォン。これはカバーを開けて受話器を取るだけで、24時間有人で管理されている防災センターに直接連絡できるというもの。広大な敷地を有する物件ならではの設備といえます。もうひとつ、災害時の緊急放送のため、屋上には深沢ハウスの防災無線屋外拡声子局が設置され、危険を通報することにもなっています。

井戸
駒沢公園と隣接する敷地内に設置された。災害時には給水活動を行う
中庭からつながるビオトープ
水は循環して使われるようになっている
非常用トイレ
マンホールの上に載せて使用する。外からは見えないようなスタイル
ベンチ
座面を取り外すとかまどとして使用できる。基本的には世田谷区の指揮下にあるが、もちろん住民も利用できる
T型インターフォン
カバーを開けるとすぐに受話器が取れる。敷地内6箇所に設置されている
24時間有人で管理されている防災センター
広い敷地内はいつも防犯カメラで監視されている。もちろん災害時にも役に立つはず

備蓄倉庫には住民1日分の食料、その他の防災備品が

ライフラインを補う設備に加え、食料その他の備えが大事であることも周知の事実。そこで「深沢ハウス」では2箇所の備蓄倉庫にミネラルウォーター、乾パン、アルファ米、ドロップといった食料とヘルメット、軍手、スコップ、救急箱に毛布、ハンマーなどといった防災備品を蓄えてあります。

しかし、備蓄してある食糧は1日分。総務省消防庁の「地震防災マニュアル」では、一般に災害に備えて用意すべきは水で最低3日分、食料なら援助が来るまでの数日分となっています。それを考えると不足では?と思われますが、ここにもうひとつのポイントがあります。それは自分で備える、その意識を啓発するという点です。

地下1階にある備蓄倉庫
備蓄された品は定期的に点検、補充されている

防災訓練などで培われた高い防災意識が最大の地震対策

東京には日本の人口の10分の1が集中しています。そのため、関東以西のすべてのコンビニから首都圏におにぎりを送ったとしても、1日分の必要数には届かないという試算もあるほど。もちろん、全国からの支援に期待はするにしても、それだけではなんともならないのが現実なのです。そこで大事なのが前述の自助意識。自ら備える、備えなくてはいけないという意識です。

ただ、平時にあってこうした意識を持ち続けるのは難しいこと。そこで「深沢ハウス」では年に1度、遊び感覚で参加できる防災訓練を実施しています。今年も8月に行われた深沢ハウス夏祭り「遊防祭(あそぼうさい)」では敷地内の防災設備を回るスタンプラリーや防災食を使ったメニューの試食、はしご車やミニパトへの試乗などが行われ、参加者は500余名。総戸数が772戸ですから、かなりの方が参加した計算になります。

防災訓練

参加しやすい内容を検討、工夫した管理会社の努力もさることながら、注目したいのは積極的にイベントを盛り上げた管理組合、自治会など、住んでいる人たちの意識の高さ。聞けば、「深沢ハウス」では趣味その他の任意団体の活動が活発で、インターネット上での総会への参加をいち早く可能にするなど先進的な試みへの取り組みも熱心に行われているのだとか。

防災訓練の様子
ミニパトやはしご車体験など子どもたちが喜びそうなイベントのほか、免震構造になっていない建物部分の説明や防災用設備のスタンプラリーなど実用的な内容も多彩

防犯では監視カメラやオートロックなどの機械ではなく、人の目、住民の意識が最大の抑止力と言われていますが、それは防災も同じこと。建物の構造、設備などはもちろん、住む人に災害に備える気持ちがあることが最大の対策といえるのではないでしょうか。

取材物件

【取材物件】深沢ハウス

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