最初に行われたのは被災後、室内ではどのようなことが起きるかを細かくシミュレーションすることでした。
「電気、水、ガス、エレベーターなどが発災後1週間どのような状況に置かれるかを検討し、それに合わせて何が必要かを洗い出しました。たとえば電気。自家発電システムのある六本木ヒルズ以外は建物内の発電機で共用部の一部の照明、エレベーター、受水槽ポンプと室内の震災用照明を動かし続けることができますが、リミットは3日。電力が復旧するには1週間かかると言われていますから、4日目からの1週間後まではブラックアウトすることになります。首都圏直下型地震の場合のガス停止率は77.5~100%。1カ月は復旧しないと言われており、調理、入浴ができなくなります。しかし、森ビルではどの建物でも3人家族層想定で、3食3日分の食料を備蓄していますし、4日目以降は行政からの配布も行われるようになるはず。とすると、問題は入浴だといった具合に生活に関わるすべてを考えていきました」(森ビル住宅事業部技術統括グループ・菊池正明氏)。
その結果、自室で1週間を過ごすために問題になるのは電気、水道、ガスの停止であることが判明しました。続いて検討したのは、その問題をクリアするには何を用意したら良いか。
「電気については室内で過ごす夜間の闇をなんとかしなくてはいけない。災害後の心細い時期、家族はリビングに集まって過ごすだろうから、そこに置く照明としてランタンを用意することにしました。でも、それだけでは住戸内を移動する際に不便なので、持って歩けるライトも必要と、2種類の灯りを用意することにしました」(同上)。
商品選定にあたっては長期に入居するお客様がいることを考え、長く保存しておいても劣化の少ない品が選ばれています。「電球は70~80時間は連続点灯ができるLED、電池は未使用なら10年保管可の品を選ぶなど、今回用意した品はすべて長期に安全に使えることを基本に考えてあります。災害はいつ起こるか分かりませんが、その際、電池が使えないようでは役に立ちません」(同上)。